ベトナム:【Q&A】外国人労働者が複数の職場を兼務する場合
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 澤 山 啓 伍
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Q. 弊社の本社工場は北部H省にありますが、5月から北部B省で新たな工場を操業開始します。新工場の技術部門長には、現在本社工場の技術部門長をやってもらっている日本人に就いてもらい、両工場の技術部門長を兼務してもらおうと考えています。この日本人は、既にHung Yenの労働局から発行された労働許可証を取得していますが、この兼務を行うに当たって、新たに労働許可証を申請しなければならないでしょうか?
- A. ベトナムにおいて外国人労働者が就労するには、原則として労働許可証を取得する必要があります。労働許可証は当該外国人を雇用する雇用者が申請を行うものであり(政令11/2016/ND-CP号第10条1項)、雇用者に紐づけられています。また、ベトナムで勤務する外国人労働者に関する通達第40/2016/TT-BLDTBXH号の別紙8によれば、労働許可証には、外国人労働者の氏名、生年月日及び国籍を含む個人情報に加えて、雇用者、勤務先、職業及び肩書(職位)も記載されることになっています。したがって、労働許可証が発行された外国人労働者は、そこに記載された勤務先や肩書(職位)の範囲内でしか就労することができないものと考えられています。そこで、もし外国人労働者の雇用主が変更されたり、別の勤務先に異動したり、肩書が変更された場合には、原則として、新たな労働許可証の取得が必要であるものと考えられます。
- しかしながら、同通達第18条では、一部の変更があっても、新たな労働許可証を取得する必要がない場合を規定しています。すなわち、有効な労働許可証を有する外国人労働者は、労働許可証に記載された現在の勤務地とは異なる省で、連続10日間以上、同じ肩書で勤務することになった場合、新たな労働許可証を取得する代わりに、異動先の省の労働局に対して、通知を行えば足りることになっています。
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この通知には、以下の情報を記載した上で、当該外国人労働者の有効な労働許可証の公証付写しを添付して提出する必要があります。
- • 雇用者の名称
- • 外国人労働者の勤務先、職務、肩書、勤務時間
- すなわち、ご質問の場合においては、雇用者、肩書(職位)に変更はなく、勤務先が変更されるのみですので、上記の通知をすれば足り、新たな労働許可証を取得する必要はありません。他方、新工場が別法人に属するため雇用者に変更がある場合や、新工場では工場長を務めるというように肩書に変更がある場合には、新工場が所在する北部B省での新たな労働許可証を取得する必要があります。
- なお、この点は、以前の通達第03/2014/TT-BLDTBXH号におけるルールから若干変更されています。以前は、外国労働者が1ヵ月のうち10日以上又は1年につき合計で30日以上別の場所で勤務する場合には、上記のような通知義務が発生するとされていました(通達第03号第14条10項)。現行の規制では、上記の通り、「連続10日間以上勤務する場合」に通知が必要ですので、例えば、月-水は本社工場、木-金は新工場で勤務するような場合には通知が不要となりました。