◇SH1996◇ベトナム:【Q&A】インターンシップを行う場合の契約方法 澤山啓伍(2018/07/26)

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ベトナム:【Q&A】インターンシップを行う場合の契約方法

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

  1. Q. 最近、ベトナムの大学の卒業シーズンが近づいているためか、大学生のインターンの申込みを受けることが多くなってきました。卒業後の採用も見込んで、弊社でもインターンを数人受け入れようと思っていますが、この場合、インターン生との間でどのような契約を締結すればいいでしょうか?
     
  2. A. ベトナムの現行法令では、インターンとして短期間企業の職場で勤務する場合を想定した規定は特に見当たりません。最も近い勤務形態として、「雇用者が自らの事業所で就労させるために職業訓練生を採用する場合」を定めた労働法第61条及びその関連規定がありますので、ご想定されているインターンシップについても、この「職業訓練」として受け入れるという形にするのが最も適切ではないかと考えています。

 

 職業訓練は、公立又は私立の専門的な職業訓練学校で行われることも多いですが、労働法第61条は一般の企業が自らの職場で職業訓練生を採用する場合、その企業の事業として訓練職業事業を登録する必要はないことを明記しています。但し、この場合企業は職業訓練生から学費を徴収することはできません。

 職業訓練としてインターンを受け入れる場合、雇用者及び訓練生の間で職業訓練契約を書面で締結する必要があります。職業訓練契約には、職業訓練法第39条に記載された内容を含めることになります。特に、インターンのように雇用者の下で就労させる職業訓練の場合には、訓練終了後の雇用者による採用についての誓約を記載する必要があるとされています(同第3項第(b)号)。この点については、労働法第61条3項でも、職業訓練期間の終了後、労働法の規定に従う各条件が満たされている場合には、両当事者は労働契約を締結する義務を負うとされています。これらの規定は、必ずしも職業訓練の終了後雇用者が当該訓練生を必ず採用しなければならないという意味ではないと考えられますが、どのような場合に採用し、どのような場合には採用しないのかについて、職業訓練契約の中で、基準を明確に定めておく必要があるものと思われます。

 インターンの場合、インターン生に対して給与を支払う場合もあれば、無給とする場合もあるかと存じます。労働法上、雇用者の職場で勤務する職業訓練の場合、職業訓練生がその期間中に雇用者の生産・製造活動に参加し、規格に適合した製品を製造した場合には、雇用者が報酬を支払う義務が規定されています(労働法第61条2項)。また、職業訓練法第39条3項では、そのような場合、職業訓練契約において、支払の対象とする勤務期間及び賃金レートを記載しなければならないとしています。直接製造に関わらない事務スタッフ等のインターンの場合には、必ずしも給与を支払う必要はありませんが、いずれにせよその条件は契約に明記しておくことが望ましいと思われます。給与が発生する場合であっても、職業訓練契約は雇用契約ではないため、インターン生は強制社会保険の加入対象ではないと考えられます。

 なお、インターンといいながら、大学卒業後の採用のための適性判断という性格が強いような場合には、試用契約という形を採ることも考えられます。試用契約の詳細については第34回の記事をご参照いただければと存じますが、試用契約の場合、その期間は職務内容によって異なりますが、最大でも60日間となりますので、ご留意ください。

 

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