◇SH2254◇東京地検特捜部、日産自動車前会長らを虚偽有価証券報告書提出の容疑で起訴・再逮捕(2018/12/18)

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東京地検特捜部、日産自動車前会長らを
虚偽有価証券報告書提出の容疑で起訴・再逮捕

――法人としての日産自動車も起訴――

 

 東京地検特捜部は12月10日、日産自動車の前会長らによる虚偽有価証券報告書提出に係る事件で、前会長ら2名と法人としての日産自動車を金融商品取引法違反容疑で起訴し、さらに2名については再逮捕した。同日、証券取引等監視委員会が2名と法人としての日産自動車について東京地方検察庁に告発を行っている。

 本件では、カルロス・ゴーン前代表取締役会長の報酬額を実態よりも少なく見せるため、同氏とグレッグ・ケリー前代表取締役が、長年にわたり、有価証券報告書に虚偽の記載をしていたなどとして、11月19日に東京地検特捜部が両名を逮捕。これに対して日産自動車では、内部通報に基づく内供調査を経て捜査に全面協力しており、同社関係者が司法取引を行ったとされている(後掲の別稿参照)。

 その後、日産自動車では11月22日の取締役会でゴーン氏の会長職・代表権およびケリー氏の代表権を解き、三菱自動車では11月26日の取締役会でゴーン氏の会長職・代表権を解く決定を行っているところである。

 今回の告発・起訴の対象となったのは、証券監視委によると、日産自動車の平成23年3月期~27年3月期の5年間、ゴーン氏の報酬・賞与その他について、実際は合計約98億5,500万円だったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、合計約49億8,700万円と虚偽の金額を記載した有価証券報告書を提出した疑い。

 さらに東京地検特捜部は、直近の3年分(平成28年3月期~30年3月期)の有価証券報告書についても同様の疑いがあるなどとして、両名を再逮捕している。

 なお今回の起訴を受けて、日産自動車では、「この事態を極めて重く受け止め、証券市場における開示情報の信用性を大きく損なったことを深くお詫びし、今後、さらなるガバナンスの強化に努め、企業情報の適切な開示を含めコンプライアンスを遵守した経営に努める」旨のコメントを公表している。

 また、同社は同日、「過年度有価証券報告書等の訂正予定に関するお知らせ」も併せて公表しており、その中では、「現在、役員報酬として本来開示すべきであった額、及び有価証券報告書上の役員報酬額の訂正に伴い必要となる可能性のある、報酬費用の計上等の財務情報等に関する訂正内容を精査」しており、「これらの訂正内容が確定次第、速やかに、過年度の有価証券報告書及び四半期報告書の訂正報告書を財務当局に提出するとともに、決算短信及び四半期決算短信の訂正を各位に開示」することとしている。

 以下では、証券監視委の公表内容から、「告発の対象となった犯則事実」を紹介する。

 

証券取引等監視委員会「日産自動車株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について」(12月10日)

 証券取引等監視委員会は、本日、金融商品取引法違反(虚偽有価証券報告書提出)の嫌疑で、嫌疑法人1社及び嫌疑者2名を東京地方検察庁に告発した。告発の対象となった犯則事実については下記のとおり。

1 告発の対象となった犯則事実

 犯則嫌疑法人日産自動車株式会社は、横浜市に本店を置き、自動車の製造及び販売等を目的とする会社であって、その発行する株券を株式会社東京証券取引所市場第一部に上場しているもの、犯則嫌疑者Aは犯則嫌疑法人の代表取締役会長等であったもの、犯則嫌疑者Bは犯則嫌疑法人の代表取締役等であったものであるが、犯則嫌疑者両名は、共謀の上、

第1 日産自動車株式会社の業務に関し、平成23年6月末、平成23年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約17億7,700万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億8,200万円と記載した有価証券報告書を提出し

第2 犯則嫌疑法人日産自動車(以下「犯則嫌疑法人」という。)の業務に関し、平成24年6月末、平成24年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約18億9,400万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億8,700万円と記載した有価証券報告書を提出し

第3 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成25年6月末、平成25年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約20億2,500万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億8800万円と記載した有価証券報告書を提出し

第4 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成26年6月末、平成26年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約19億4,600万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも9億9,500万円と記載した有価証券報告書を提出し

第5 犯則嫌疑法人の業務に関し、平成27年6月末、平成27年3月期の連結会計年度につき、犯則嫌疑者Aの報酬、賞与その他その職務執行の対価として日産自動車株式会社及びその主要な連結子会社から役員として受ける財産上の利益であって、当該連結会計年度に係るものが約22億1,300万円であったにもかかわらず、その一部を隠ぺいして、「コーポレート・ガバナンスの状況」欄内の「役員ごとの連結報酬等の総額等」欄に犯則嫌疑者Aの総報酬及び金銭報酬をいずれも10億3,500万円と記載した有価証券報告書を提出し

もって、それぞれ、重要な事項につき虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した(犯則嫌疑法人につき、第2ないし第5事実。犯則嫌疑者両名につき、第1ないし第5事実)。

 

 

  1. 証券監視委、日産自動車株式会社に係る虚偽有価証券報告書提出事件の告発について(12月10日)
    https://www.fsa.go.jp/sesc/news/c_2018/2018/20181210-1.htm
  2. ○ 日産自動車、当社に係る金融商品取引法違反について(12月10日)
    https://newsroom.nissan-global.com/releases/release-b80d5f605e170e28db6d451af70ec6aa-181210-04-j?lang=ja-JP
  3. ○ 日産自動車、過年度有価証券報告書等の訂正予定に関するお知らせ(12月10日)
    https://www.release.tdnet.info/inbs/140120181210447414.pdf
  4.  
  5. 参考
    SH2212 日産自動車、ゴーン会長ら2代表取締役を内部通報・内部調査を経て解職(2018/11/27)
    https://www.shojihomu-portal.jp/article?articleId=7661243
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