◇SH2710◇アスクル、株主総会による4取締役の再任否決で独立取締役および指名・報酬委員の選任・選定が不可能に――ヤフーの議決権行使を巡っては諸団体から意見表明も (2019/08/06)

未分類

アスクル、株主総会による4取締役の再任否決で独立取締役および指名・報酬委員の選任・選定が不可能に

――ヤフーの議決権行使を巡っては諸団体から意見表明も――

 

 アスクルは8月2日、同日開催された第56回定時株主総会における「第2号議案 取締役10名選任の件」「第3号議案 監査役1名選任の件」に係る議決権行使結果等を受け、同日の取締役会で代表取締役の異動、取締役・監査役の選任について決議し、発表した。合わせて過半数の議決権を有するヤフーおよびプラスがアスクル代表取締役社長および独立社外取締役3名の再任に反対する議決権行使を行ったと事前に表明していたことからその帰趨が注目されていた。

 社長にとどまらず独立社外取締役の再任拒否に及んだヤフー・プラスによる議決権行使については、アスクルが「当社が構築してきたガバナンスプロセスを否定し、両社が共同してこのような行使に及んだことについて大変遺憾であります」(アスクル7月24日付発表「ヤフー株式会社ならびにプラス株式会社による当社第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案)に対する議決権行使について」参照)と表明するとともに、アスクル独立役員会においても「上場子会社のガバナンスを蹂躙しているものであると深い憂慮を禁じ得ません」とする意見を明らかにしていた(同じく7月28日付発表「アスクル株式会社 独立役員会による『ヤフーによるアスクルの企業統治を蹂躙した議決権行使を深く憂慮する声明』提出について」参照)。また、法学教授による法律意見書の公開、株主総会実務に詳しい弁護士らの同社記者会見における見解表明の再現・公表を含め、アスクルとして継続的な広報に注力してきたところであった(7月28日までの経緯について、SH2698 ヤフー、連結子会社の社長・独立取締役ら4取締役の再任に反対する議決権行使――対するアスクルは法律意見書・独立役員会意見等を公表、株式売渡請求権行使の意向を示す (2019/07/30)既報)。

 ヤフーはアスクル株主総会の開催を控えた7月29日、「アスクルの第56回定時株主総会における取締役選任議案(第2号議案)の議決権行使について」と題し、再任に反対した理由を補足的に説明するとともに、アスクルの少数株主である資産運用会社レオス・キャピタルワークス株式会社からもヤフーの判断を支持する旨のコメントを直接受領したなどと発表。東京証券取引所の「コーポレートガバナンス・コード」と経済産業省の「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」を踏まえ、株主総会後もヤフーとして「アスクルの一般株主の利益に十分配慮し、同社における実効的なガバナンス体制の確保に向けて行動をしていく考えです」と述べたほか、特に焦点となる独立社外取締役については「速やかに、アスクルにおいて臨時株主総会などを通じて、新たな独立社外取締役の方が一般株主の利益を確保するに十分な人数選任されるよう、 アスクルにおける指名プロセスの独立性を前提としつつ、当社としても最大限協力していきます」とした。

 この発表を巡ってアスクルは同日、ヤフーのいう「低迷する業績」「低迷する株価」「(ヤフーによる社長ら再任反対後の)アスクル株価の上昇」について反論するリリースを発表。また、「多くの機関投資家から一般の株主様まで、大変多くの応援のお声をいただいております」として機関投資家の声を紹介するほか、ヤフーによる「実効的ガバナンス体制確立への協力」についても「すでに当社が構築してきたガバナンス体制を一切無視して行われている一連のヤフーの行為こそが、当社のガバナンス体制を壊しているということを強く主張します」と批難しつつ、アスクルとして7月24日に経産省経済産業政策局産業組織課を訪問し「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針」の趣旨に関する説明を聴取したこと、7月29日(編注・発表同日)には東証を訪問し、本件の経緯やヤフーの行為に関する問題点など同社の認識を説明したことを明らかにした。

 アスクルは、7月30日には「当社からヤフー株式会社、プラス株式会社に対する『株主総会に係る質問書』、および両社からの回答について」とし、アスクルからの質問書およびヤフー・プラス両社からの回答を公表。アスクルによる質問は、本件株主総会においてヤフーおよびプラスが取締役選任に係る動議を提案する予定の有無、その他の動議の提出予定・可能性について問うものであった。

 プラスは7月29日付で、ヤフーは翌30日付で大要「本件株主総会の議題・議案が招集通知記載のとおりであり、かつ、同総会が適法・適切に運営される限り、動議を提出する予定・意向はない」とする旨の回答を寄せるとともに、「(ヤフーに対するアスクル株式の売渡請求を行うことに関する審議・決議を予定するアスクルの)8月1日開催予定の取締役会の運営・内容によっては、止むを得ず変更する可能性がある」旨を表明。ヤフーは加えて7月31日、「アスクルにおける第56回定時株主総会および『ヤフー株式会社に対する当社株式の売渡請求の件』を目的とする取締役会について」を発表し、このなかで「株主総会が、株式会社における最高の意思決定機関である」こと、「当社の協力を拒絶する業務・資本提携の解消はLOHACO事業の価値を毀損する結果となる」ことを説明しながら、社長および独立社外取締役の「信任はできない」と改めて述べている。なお、アスクルは7月31日の発表により「8月1日取締役会における当社株式の売渡請求審議の延期について」を公表、同日の臨時取締役会を開催しないことにした旨、審議延期が株式売渡請求権を放棄するものではない旨を明らかにした。

 一連のやりとりに絡んでは、日本取締役協会(会長・宮内義彦氏)が7月30日付「緊急意見 日本の上場子会社のコーポレートガバナンスの在り方(2019)」を、また日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(理事長・牛島信氏)が8月1日付「支配株主を有する上場子会社のコーポレート・ガバナンスに関する意見」をそれぞれ公表するに至っており、アスクルは前者を7月31日付リリースにより、後者を8月1日付リリースにより紹介している。

 このような経過を経て迎えた8月2日の本件株主総会では(1)「第2号議案 取締役10名選任の件」に関し、①社長、②独立取締役A、③独立取締役B、④独立取締役Cの賛成割合はそれぞれ①20.80%、②26.25%、③26.00%、④25.60%にとどまって否決。(2)「第3号議案 監査役1名選任の件」は91.92%の賛成により可決された。

 アスクルは同日、本稿冒頭に述べた「代表取締役の異動、取締役・監査役の選任について決議」し、これを発表したものである。社長および独立社外取締役の退任とともに新社長・CEOとして前取締役BtoCカンパニー最高執行責任者(COO)が就任することなどを定型的に公表するものであったが、同社は同日のうちに「本日の取締役記者会見について」と題するリリースを発表。

 ここでは【本日の発表内容】として「1. 新体制のご紹介」「2. 新体制としての基本的考え方」を説明し、「2」では「実質的な支配株主を有する上場会社としての独立性が損なわれないため、また、少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の確立についての意見は不変」であること、「ヤフー株式会社とは、両社にとって最適な関係のあり方についての話し合いを速やかに開始したい」とする意向、「ロハコ事業はヤフー株式会社とも協議の上、策定された再構築プランに則り、大幅増益を実現すべく進めて」いくとする方針を表明した。

 さらに【ご説明事項】として、「1. 本日の代表取締役選定、CEO、COO決定のプロセスについて」「2. コーポレート・ガバナンス体制の再構築について」「3. 独立社外取締役不存在の状態を解消するための臨時株主総会の開催について」言及。「1」に関し、暫定的に独立社外監査役を中心とした指名・報酬委員会を組織する提案がなされたが一部取締役の反対により可決せず、指名・報酬委員の選定ができなかったことから、取締役会で協議・選定したことを説明するとともに、「2」を巡り「2000年10月以降前代未聞となる独立社外取締役が一人もいないという異例な状況になったこと」が同社として大変遺憾であると述べた。「3」については、すみやかに新たな独立社外取締役を選任すべく臨時株主総会の開催準備を進めていくとしている。

 また「4. ヤフーとのこれからの関係について」もコメントし、(ア)資本関係を解消したいという基本スタンスに変更はないが、両社にとってよりよい関係の模索のための協議をすみやかに開始したいと考えており、あらゆるステークホルダーにとって最適な解を模索していくこと、(イ)今後の売渡請求権行使については、今後のヤフーとの協議を注視しつつ引き続き慎重に検討していくことを明らかにした。

 なお、8月5日付で発表された本件株主総会に係る議決権のアスクルの集計によると、「ヤフーおよびプラスの議決権行使を除いた場合」の上記取締役4名の賛成割合は、それぞれ①75.74%、②95.58%、③94.65%、④93.19%にのぼるという。

 

タイトルとURLをコピーしました