アスクルが「(暫定)指名・報酬委員会」を設置、運営方針を発表
――ヤフー・プラスの独立取締役再任反対を受け、外部弁護士ら起用し臨時総会まで対応――
アスクル(東京都江東区、東証第一部上場)は9月17日、「(暫定)指名・報酬委員会」の委員長が選定されるとともに「(暫定)指名・報酬委員会の運営方針」が決定されたと発表した。
前日16日に同委員会の第1回会合が開催され、決定事項を同社として公表したもの。同社では8月2日開催の定時株主総会において、合わせて過半数の議決権を有するヤフー(東京都千代田区、東証第一部上場)・プラス(東京都港区、非上場)が会社側提案の取締役選任議案のうち代表取締役社長および独立取締役3名の再任に反対する議決権行使を行ったことから独立取締役が不在となり、指名・報酬委員会の設置も不可能となっていた(SH2710アスクル、株主総会による4取締役の再任否決で独立取締役および指名・報酬委員の選任・選定が不可能に――ヤフーの議決権行使を巡っては諸団体から意見表明も (2019/08/06)既報)。
アスクルは9月12日、同日開催の取締役会で「(暫定)指名・報酬委員会」の設置を決議したと発表。上述の経緯に触れながら、その後、ヤフー・プラスとも協議を重ね「少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の再構築を急務とし」て独立社外取締役の選任プロセスにつき検討してきたとし、(ア)実質的な支配株主を有する上場会社である同社の独立社外取締役には経営陣のみならず支配的株主であるヤフー・プラスからの独立性が強く求められること、また(イ)透明性・公平性・客観性を担保して独立社外取締役選任のプロセスを進めることが必須であることを考慮したと説明したうえで、「独立社外取締役不在の状況下における次善の策」とし、しかしながら同社「指名・報酬委員会規程」には沿うかたちで、①顧問弁護士2名、②独立社外監査役2名、③同社代表取締役社長を委員とする暫定的な委員会の設置を表明するものであった。
9月12日の発表では計5名となる指名・報酬委員の全容を明らかにしており、これによると、①の顧問弁護士については(ⅰ)とくに危機管理に関して著名で複数の上場企業において社外役員を務める東京都内の弁護士、(ⅱ)同様に複数の企業の社外役員を務める東京大学名誉教授・中央大学大学院教授の2名と12日付で新たに顧問契約を締結することにより選任。過去に同社の顧問弁護士を含めて契約関係にあったことはなく、利害関係は一切ない。委任内容として顧問契約では、両氏が「会社法、コーポレートガバナンス・コードおよびグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)等の趣旨を尊重して、中立・公正な立場で業務を行うこと」「当社の業務執行に対する助言等は行わないこと」とされた。
なお、今般のすべての指名・報酬委員の任期は「(暫定)指名・報酬委員会が取締役候補者案を取締役会に答申し、当該内容に従った取締役候補者全員が株主総会で選任され、就任した時まで」となっている。また、ヤフー・プラスからは「(暫定)指名・報酬委員会を設置して取締役候補者の選定を行っていくことについては同意を得ており、あわせて、今後も引き続き当社の少数株主保護のためのガバナンス体制の再構築に向けて積極的に協力する旨の申し出を受けて」いるとした。
アスクルの9月17日付発表によると、委員の互選により上記(ⅰ)の顧問弁護士が委員長に選定された。併せて発表された「(暫定)指名・報酬委員会」名による同委員会の運営方針によれば、同委員会の任務は「現在欠員となっている独立社外取締役候補者案を取締役会に答申すること」に尽きる。掲げられた運営方針は、次の3点である。(1)会社法、コーポレートガバナンス・コードおよびグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)等の趣旨にしたがい、アスクル、ヤフー、プラスのいずれからも独立し、中立・公正で透明性を確保した運営を行うこと。(2)アスクルとヤフー、プラスの間で見解の相違があり得ることを前提としつつ、アスクルの企業価値向上のために適切な経営判断を行い得る能力を備えた独立社外取締役候補者を指名するよう努めること。(3)独立社外取締役候補者の指名においては、多様性の確保にも十分に配慮すること。
上記(3)に係る選任基準としては、「アスクルの企業価値向上のために最適な判断ができること」「アスクルの企業理念・文化を理解し、共有できること」「アスクルの執行部からの独立性のみならず、ヤフー及びプラスからの独立性が確保されていること」「コーポレートガバナンス及び資本市場の公正確保(一般株主の権利の尊重を含む)についての十分な見識を有すること」「ビジネス(ネットビジネスを含む)に対する十分な理解を有すること」の5点を挙げている。