◇SH2793◇厚労省、労働政策審議会労働政策基本部会報告書を公表――働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために(2019/09/25)

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厚労省、労働政策審議会労働政策基本部会報告書を公表

――働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために――

 

 厚生労働省は9月11日、労働政策審議会労働政策基本部会(部会長=守島基博・学習院大学副学長・経済学部教授)が取りまとめた報告書について、労働政策審議会(会長=鎌田耕一・東洋大学名誉教授)が了承したとして、公表した。

 AI等(AI、IoT、ビッグデータ、ロボット等)は、「積極的に活用されれば、労働生産性を向上させ、人口減少社会における経済成長を支える基盤となることが期待」され、「労働者がAI等を主体的に活用できれば、自らの力を発揮して仕事ができる環境を作ることや、家庭や地域社会での時間を充実させることも可能になり、労働者一人ひとりの幸福度を高め、消費を生み、学びの気持ちを高め、日本の豊かな将来につながる」と考えられる。

 その一方で、「AI等に代替されるタスクから構成される仕事の減少をもたらす懸念がある」ほか、「個々の労働者がタスクの変化に伴い求められるスキルアップやキャリアチェンジにどのように対応していくのか」、といった新たな課題も生じるとされているところである。

 そこで、こうした認識の下、同部会では、AI等の技術革新の動向と労働への影響について、平成30年12月から8回にわたり、実際にAI等の現場への導入や運用に携わる関係者等のヒアリングを交えながら議論を深め、その成果をとりまとめたものである。

 報告書では、「本報告の内容を踏まえ、労使においてAI等の活用に関して議論が重ねられていくことが期待される」とともに、同審議会の「関係分科会や部会等においても必要な施策が検討されることを求めたい」としている。

 本報告書の構成と、「3 働く現場でAI等が適切に活用されるための課題」の概要は、次のとおりである。

 

構成

  1. はじめに
  2. 1 質の高い労働の実現のためのAI等の活用
    ⑴ 人口減少の中でのAI等の積極的な導入の必要性
    ⑵ 就業構造の変化に対応したAI等の導入
    ⑶ イノベーションによる産業構造の変化と雇用への影響
  3. 2 AI等の普及により求められる働き方の変化
    ⑴ 労働環境の変化への対応方針の協議
    ⑵ AI等との協働に必要なスキル
    ⑶ スキルアップ・キャリアチェンジに向けた支援
    ⑷ AI等の活用が進む中での労働者への支援
  4. 3 働く現場でAI等が適切に活用されるための課題
    ⑴ 労働者のプライバシーの保護や情報セキュリティの確保
    ⑵ AIによる判断に関する企業の責任・倫理
    ⑶ 円滑な労働移動の実現や新しい働き方への対応
    ⑷ AI等がもたらす時代の変化を見据えた政労使のコミュニケーションの重要性
  5. おわりに

 

「3 働く現場でAI等が適切に活用されるための課題」の概要

  1. ⑴ 労働者のプライバシーの保護や情報セキュリティの確保

    1.   労働者のプライバシーの保護や個人情報のセキュリティの確保が実現され、安心して必要な個人データを提供し、有効に便益を得られる環境が求められる。個人情報を取り扱う者の倫理観も不可欠。
  2. ⑵ AIによる判断に関する企業の責任・倫理

    1.   AIの情報リソースとなるデータやアルゴリズムにはバイアスが含まれている可能性が指摘されているため、企業が倫理面で適切に対応できる環境整備が求められる。
    2.   他方、人間による業務判断の中にバイアスが含まれていないかを解析する技術で人間のバイアスの解消に資する可能性もあるという指摘もあり、こうした面からもAI等の活用が期待される。
  3. ⑶ 円滑な労働移動の実現や新しい働き方への対応

    1.   新技術の進展により、業務の代替や創出、産業構造の変化が見込まれる中、転職ニーズが高まり、企業の側でも必要な人材を確保する必要も生じる中、円滑な労働移動の実現が求められる。同時に、転職が不利にならない制度の在り方についても検討を進める必要がある。
    2.   クラウドソーシングやシェアリングビジネス等における新しい働き方等の拡大を背景として、雇用類似の働き方に関する保護等の在り方については、事業者としての側面や労働者との類似性等を踏まえながら、特に優先すべき検討課題について、スピード感をもって検討を進めていくことが期待される。
  4. ⑷ AI等がもたらす時代の変化を見据えた政労使のコミュニケーションの重要性

    1.   AI等の発展が、働き方や雇用に大きな影響を与えることが想定される中、良質な雇用機会の確保が重大な課題となる。これは個別の企業の内部だけでは対応しきれるものではなく、業種・産業・地域ごと、あるいは社会全体で、新しい時代への変化が差し迫る前にビジョンを固めていくことが必要。
    2.   このような時代の変化を見据えて、業種・産業レベル、地域レベル、全国レベルで政労使間の対話を継続的に行い、AI等が雇用・労働に与える影響をテーマとして、中長期的な視点から対応を検討していくべき。

 

 

  1. 厚労省、労働政策審議会労働政策基本部会報告書~働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために(9月11日)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_06697.html
  2. ○ 別添1 労働政策審議会労働政策基本部会報告書~働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために~
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/000546611.pdf
  3. ○ 別添2 労働政策審議会労働政策基本部会報告書(参考資料集)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/000546616.pdf
  4. ○ 別添3 労働政策審議会労働政策基本部会報告書(概要)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/000546617.pdf

 

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