スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会が令和元年度の初会合
――改訂に向け、運用機関・企業年金・議決権行使助言会社などを対象に検討――
スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(座長・神作裕之東京大学大学院教授)が10月2日、令和元年度における第1回会議を開催した。
スチュワードシップ・コードの前回改訂(平成29年5月)を審議した同年3月の前回会合からは約2年半ぶりの開催となっており、この間、本年4月24日公表「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(4))、6月21日閣議決定「成長戦略フォローアップ」が取りまとめられている。意見書はコードのさらなる改訂に向けた方向性を示すものであり、成長戦略フォローアップでは「2020年度内を目途に、スチュワードシップ・コードの更なる改訂を行う」とされていることを踏まえ、今般の有識者検討会においてもコードの改訂を目的として検討を進めていく。
メンバーには相当数の交替がみられるが、東京証券取引所・法務省のオブザーバーに変更はない。ほか、経済産業省からは産業組織課長が、厚生労働省からは企業年金・個人年金課基金数理室長がオブザーバーとして参画。事務局は、金融庁企画市場局企業開示課が務める。
当日の会合で配付された事務局説明資料によると、スチュワードシップ・コードの受入機関数は継続的に増加しており、9月30日時点で269機関にのぼっているという。上掲・意見書(4)を踏まえ、なお検討課題として具体的に示される論点は(a)運用機関、(b)企業年金等のアセットオーナー、(c)サービスプロバイダー(議決権行使助言会社・年金運用コンサルタント)といった主体別に明らかにされた。
上記(a)については、議決権行使の理由の説明など投資先企業との対話の状況等についての開示が不十分であるとし、①個別の議決権行使に係る賛否の理由、②企業との対話活動およびその結果、③コードの各原則の実施状況の自己評価等に関する説明や情報提供の充実を促していく構え。運用機関中、スチュワードシップ活動報告を公表しているのはおよそ5割であるとされる。なお、意見書(4)では「運用機関がESG要素等を含むサステナビリティを巡る課題に関する対話を行う場合には、投資戦略と整合的で、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に結び付くものとなるよう意識することが期待される」との指摘もあるところだ。
上記(b)の企業年金等のアセットオーナーに対しては、企業年金にはスチュワードシップ活動への理解が浸透していないとし、意見書(4)の指摘を踏まえ「経済界をはじめとする幅広いステークホルダーとも連携しながら、企業年金のスチュワードシップ活動を後押しするための取組みを推進する」としている。
上記(c)の議決権行使助言会社には多角的見地から「議決権行使助言会社において、十分かつ適切な人的・組織的体制の整備と、それを含む助言策定プロセスの具体的な公表が行われるとともに、企業の開示情報のみに基づくばかりでなく、必要に応じ自ら企業と積極的に意見交換しつつ助言を行うことが期待される」との指摘があり、また、運用機関に対しても「議決権行使助言会社の活用の状況について、利用する議決権行使助言会社名や運用機関における助言内容の確認の体制、具体的な活用方法等に関する説明や情報提供を促すことが重要である」とする要請がある(以上、意見書(4)3ページ参照)。
同じく(c)の年金運用コンサルタントについては利益相反管理体制に課題があるとされ、自らの利益相反管理体制の整備やその取組状況の説明などを促していく方向である。