契約の終了
第12回 組合・組合契約と終了(下)
明治大学教授
中 山 知 己
Ⅲ 契約としての組合契約の終了
これまで組合の法的性質を諾成・有償・双務契約として構成する場合には、通常であれば問題なく適用されるはずの民法諸規定、とくに民法総則、債権総則、そして契約総則に関する規定を組合契約に適用してよいか、が議論されてきた。基本的にこれは組合契約の法的性質決定に関する議論であるといってよいであろう。当初、組合契約が諾成・有償・双務契約であることは古来かつて議論なき所とされていたが[23]、後に双務契約ではないがなお契約であるとする説が生じ、やがて合同行為であるとする説が有力に主張された[24]。しかし、合同行為説に対しては従来より根強い反論[25]がなされ、この概念を生み出したドイツにおいてもその後批判があり、現在では、法律行為の分類としても一般の教科書等で合同行為概念が説明されることは少なくなっている[26]。もっとも近時は問題を抽象的ないし演繹的に法的性質決定から導くのではなく、契約総則等の規定の適用の当否を個別的に検討すべきであるとの主張がなされている。たとえば、後述するように同時履行の抗弁権、危険負担、解除の適用が制限されることから組合契約を合同行為としてよいとする見解[27]、あるいはこれと同様に、合同行為説によりつつ、意思の不存在その他の規定の適用などにつき、個別的に問題を検討すればよいとする見解[28]がみられる。もっともこのような方向の議論に対してもあえて合同行為という意味は乏しいとの指摘もある。すなわち最高裁は少なくとも公刊された裁判例では、合同行為の概念を用いていないようであり、また組合契約は実定法上の双務契約であるといいがたいがーーあまり意味のある議論でないと留保しつつーーなお組合契約は諾成・有償契約で「広義の」双務契約であるとされる[29]。
このような議論状況をみるとき、今日においてなお合同行為説に依拠する理由は何か、明確にする必要があるであろう。わが国では法律行為概念の分類に際し伝統的に合同行為概念が説明されてきたが、ドイツ法においては合同行為ではなく、決議(Beschluss)概念が採用されてきており、その経緯も含めてなお吟味される必要があろう。しかしながら、さしあたり本稿の終了との関係では、この法的性質論について団体との関連、とくに団体の終了との関係が比較的明かな我妻説を中心に検討する。
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