インドネシア:保険業法施行規則(その2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 福 井 信 雄
2016年12月23日付で保険業法に関する施行規則(以下、「保険業法施行規則」という。)が制定され、同28日付で施行されたことは前回の記事(◇SH1009◇インドネシア:保険業法施行規則(その1) 福井信雄(2017/02/10))でお伝えしたとおりであるが、本稿では、前稿で述べた株主の資格要件に加えて、支配株主に関する新規制(シングル・プレゼンス・ポリシー)を解説する。
このシングル・プレゼンス・ポリシーとは、外国投資家・内国投資家を問わず、いかなる者(ただしインドネシア政府を除く。)も、インドネシアで設立された全ての保険会社(生保・損保いずれも含む。)、再保険会社、シャリア保険会社、シャリア再保険会社の2社以上の支配株主(発行済み株式総数の25%以上の株式を保有する株主に加え、株式保有割合が25%未満でも実質的に会社の経営に直接又は間接に影響を及ぼすことができる株主も含まれる。)になることは認められないという趣旨の規制である。これは、インドネシア中央銀行の監督下にある銀行業の分野においても導入されている規制であり、保険業の分野においても2014年の新保険業法においてこの規制が導入された。制度の趣旨に鑑みると、同一法人ではなくても同じグループ会社に属する複数の法人を使って2社以上の保険会社の支配株主になることも認められないと解されるが、どの程度の資本関係がある場合にこのシングル・プレゼンス・ポリシーの適用をうけるかについては法令上明確でない。実際に株式取得手続きを進める場合には金融庁との間で事前に協議しながら取得の可否について確認する必要がある。
また、新保険業法では、同法の施行前に既に複数の保険会社の支配株主になっている株主に対しても遡及適用されるかどうかについては明記されていなかったが、新保険業施行規則において、かかる既存株主に対しても適用されることが明記され、シングル・プレゼンス・ポリシーに抵触する形態で株式保有をしている株主は、新保険業法の施行日から3年後の2017年10月17日までに、①支配権を有している複数の保険会社の合併、②支配権を有している保険会社の株式の売却、③その他金融庁が承認する組織再編のいずれかの手続きを採ることが義務付けられた。加えて、上記1.同様にかかる手続きに向けたアクションプランを作成して金融庁へ提出することも義務付けられている。上記1. と異なり履行期限は既に1年を切っていることから、こちらは至急対応を検討する必要がある。