☆タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 佐々木将平(2020/04/03)

2020年4月2日号
タイ:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

              長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木  将平

はじめに

 4月1日に発表された日銀短観が7年ぶりにマイナスに転じるなど、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動への影響が深刻化しています。また、諸外国における移動制限や事業所閉鎖の拡大に伴い、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月1日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:10人、感染者数:1,651人(3月31日現在)

 3月中旬以降急速に感染が広がっており、この2週間で感染者数が約10倍増加した。ムエタイスタジアムでの集団感染等を契機に感染が拡大していると見られ、バンコク以外にもチェンマイやプーケット等での感染者も増えている。非常事態宣言の発令後も、工場閉鎖や外出禁止等を伴うロックダウンには至っていないが、商業施設(スーパーマーケット及びテイクアウト向けのレストラン営業を除く。)の閉鎖、県境を越えた移動の中止・延期勧告等の措置がとられている。海外からの外国人の渡航は原則禁止されているが、労働許可を有する外国人に対する措置は若干緩和され、健康証明書(Fit-to-Fly。搭乗に適した体調であることの証明書)の提示により入国が認められることとなっている。

 

主な政府発表

  1. ・ 首相による非常事態宣言の発令(3月25日):感染の危険のある場所の閉鎖、県境を越えた移動の中止・延期の勧告、買いだめの禁止、集会の禁止、虚偽情報の流布の禁止等が規定されている。
  2. ・ バンコク及び周辺県の商業施設(スーパーマーケット及びテイクアウト向けのレストラン営業を除く。)における閉鎖命令(3月22日以降閉鎖)及びタイ全土における教育機関の休校
  3. ・ 政府による経済対策:第一弾として中小企業を対象とする低金利融資等、第二弾としてインフォーマルセクターの労働者に対する現金給付が公表されている。
  4. ・ 不可抗力による失業者に対する補償、社会保険の支払期限の延長、社会保険拠出金引き下げ等の措置(3月24日閣議決定)
  5. ・ 中央銀行による、クレジットカード、消費者向けローン等の債務者救済措置(3月25日)
  6. ・ 源泉徴収税率の一部引き下げ(現行3%から、4月1日以降9月30日まで1.5%、10月1日以降年末まで2%に引き下げ)
  7. ・ 非上場会社の法人税の納付期限の延期(8月31日まで)及びそれに伴うBOI企業の免税申請期限の延期(7月31日)

 

渡航情報

  1. ・ 非常事態宣言の発令に伴い、3月26日以降、外国人の入国が原則として禁止されている。
  2. ・ 例外的に、労働許可証の保有者は健康証明書(Fit-to-Fly。搭乗に適した体調であることの証明書)の提示により入国が認められる。従前は陰性証明書及びタイ国内における医療費をカバーする保険が求められていたが、3月26日以降、これらは不要となっている。入国後、自宅等における14日間の自己観察(外出は許可制)が要請される。
  3. ・ タイ国際航空は5月31日まで国内線及び国際線の全便の運休を決定しており、日系航空会社も日タイ間の国際線を減便している。

 

その他

  1. ・ バンコク内のBTS、MRT等の鉄道では、マスクの着用が義務付けられている。
  2. ・ タイの会社は、会計年度終了後4か月以内に年次株主総会を開催することが法律上求められているが、管轄当局である商務省から、期限内に開催できなかった場合には、開催後にその旨を文書で報告することを求めるアナウンスが行われた(期限内に開催できないことを事実上容認する趣旨のものであると解される。)。
  3. ・ 労働法上、事業を全部又は一部停止する際には、不可抗力に基づく場合には無給で従業員を一時帰休させることができ(ノーワークノーペイの原則)、また、不可抗力以外の場合には通常賃金の75%の支払が必要となる。労働省労働保護福祉局発行のガイドライン(3月18日付)においても、政府の命令によって閉鎖となる事業所については、不可抗力により休業を余儀なくされているものであり、その期間中の賃金を支払う必要はないとされている。したがって、政府命令に従って閉鎖となったレストランや商業施設においては、従業員に対して無給での一時帰休を命じることができると考えられる。

 

(ささき・しょうへい)

長島・大野・常松法律事務所バンコクオフィス代表。2005年東京大学法学部卒業。2011年 University of Southern California Gould School of Law 卒業(LL.M.)。2011年9月からの約2年半にわたるサイアムプレミアインターナショナル法律事務所(バンコク)への出向経験を生かし、日本企業のタイ進出及びM&Aのサポートのほか、在タイ日系企業の企業法務全般にわたる支援を行っている。タイの周辺国における投資案件に関する助言も手掛けている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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