☆フィリピン:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 坂下大(2020/03/19)

2020年3月18日号
フィリピン:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                                               長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

 

はじめに

 欧米における急速な渡航制限・行動制限の拡大に伴い、新型コロナウイルスの国内外における事業活動への影響が一層深刻化してきています。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、当事務所の海外オフィスと連携して速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本ニュースレターは感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本ニュースレターの内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本ニュースレターの内容は、特段記載のない限り、2020年3月17日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:14人、感染者数(累計):187人(3月17日現在)

 フィリピンは比較的早期に中国本土、香港、マカオからの入国禁止措置を採り、感染者は3月5日時点まで武漢からの渡航者3人(死亡者1人)のみという状況が続いていたが、その後感染者数が急激に増加しており、感染の封じ込めあるいはピークカット対策を早急に講ずる必要に迫られている。かかる事態を受けて、マニラ首都圏を含むルソン全域について向こう1か月間事実上の封鎖措置が講じられる等、この数日間でウイルス対策措置が日々刻々と、かつ劇的にアップデートされている状況にある。

 

主な政府発表

  1. ・ 労働雇用省が、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえた柔軟な働き方に関するガイドラインを発表(3月4日)
  2. ・ 国内感染の増加を受けて、COVID-19アラートシステムをCode Red sublevel 1 (5段階のうち上から2番目)に引き上げ(3月7日)
  3. ・ 大統領による公衆衛生上の非常事態宣言(3月9日発表)
  4. ・ 大統領によるウイルス対策の追加措置の発表、COVID-19アラートシステムを最高レベルのCode Red sublevel 2に引き上げ(3月12日)
  5. ・大統領府、官房長官によるウイルス対策の追加措置に関するメモランダム(3月14日)
  6. ・ セブ州、一定の入域制限、検疫措置を発表(3月14日、15日)
  7. ・ ルソン全域(マニラ首都圏含む)に「強化されたコミュニティ隔離(enhanced community quarantine)」の措置(3月16日)

 

渡航情報

  1. ・ 過去14日間以内に中国本土、香港、マカオ、韓国大邱広域市及び慶尚北道清道郡に滞在歴のある外国人(永住ビザ保有者等を除く)の入国及び乗継ぎは禁止されている。
  2. ・ 過去14日間以内にイラン及びイタリアへの渡航歴のある外国人(永住ビザ保有者等を除く)は、出発前48時間内に権限のある当局から発行された、新型コロナウイルスに感染していないことを示す証明書がなければ入国できず、入国後も14日間隔離される。
  3. ・ フィリピン国民については、中国本土、香港、マカオ、韓国の大邱広域市及び慶尚北道清道郡への渡航が禁止されており、韓国のうち前記以外の地域へは、関連するリスクを理解したことを示す宣誓書に署名することを条件に渡航可とされている(いずれも当該地域の永住権保有者等は別の制限あり)。

 

その他

  1. ・ 3月17日より、フィリピン証券取引所における取引が無期限で停止されている。
  2. ・ ルソン全域(マニラ首都圏含む)において、3月17日から4月13日までの間、大要以下の措置が講じられる。
     授業や学校関連行事の中止(4月14日まで)
     大規模集会の禁止
     全世帯における自宅隔離措置
     行政機関(一定例外あり)の在宅勤務
     一定の渡航、移動制限
  3. ・ 上記措置により、本稿執筆時点では、マニラ首都圏に拠点を有する現地企業のオペレーションに少なからず混乱が生じている模様である(在宅勤務体制の準備や、行政機能のスローダウン等)。例えば許認可関連の行政手続等は、ここ数日は事実上機能停止している状況である。
  4. ・ 3月12日に、証券取引委員会(SEC)より、遠隔的手法(電話、ビデオ会議等)による株主総会開催に関するガイドラインが策定されている。
  5. ・ 2019年の年次報告書、計算書類のSECへの提出期限の延長が認められている(3月12日)。

 

(さかした・ゆたか)

2007年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、クロスボーダー案件を含む多業種にわたるM&A、事業再生案件等に従事。2015年よりシンガポールを拠点とし、アジア各国におけるM&Aその他種々の企業法務に関するアドバイスを行っている。

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、Duke University, The Fuqua School of Business卒業(MBA)。日本及び米国カリフォルニア州の弁護士資格を有する。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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