◇SH0051◇企業法務よしなしごと-ある企業法務人の蹣跚9 平田政和(2014/08/01)

そのほか法務組織運営、法務業界

(第9号)

企業法務よしなしごと

・・・ある企業法務人の蹣跚(まんさん)・・・

平 田 政 和

 

Ⅰ.Freshmanのために・・・若いうちにこれだけはやっておこう(その6)

【印紙税法を勉強する】

 新人の法務部員に対する質問で多いのが印紙税についての質問である。必要な税額の収入印紙を貼付し、契約当事者の印で消印をしなければ契約書が無効となる、と誤解している人が多いためであろうか。学生時代に勉強する機会がないこともあり、質問されて戸惑う新人法務部員も多い。

 印紙税の基礎知識や税務当局の運用方針については最初のうちにきっちりと勉強し、理解しておく必要がある。①印紙税は文書に対して課される税金である、②印紙税法別表第一の課税物件表に掲げられている契約書などが課税物件である、③ある文書が課税物件に該当するか否かはその文書に記載されている文言や符号等に基いてのみ判断される、④納税義務者は課税文書の作成者である、⑤課税物件に印紙を貼付し忘れたり、貼付したが消印をし忘れるということがあっても契約自体は無効にはならない、印紙税法違反(脱税)となるだけである、などといった基本的概念をきっちりと理解するとともに印紙税法だけでなく印紙税法施行令や印紙税法基本通達にもできるだけ早く目を通し、その内容を理解しておく必要がある。

 私は疑問があれば国税庁や国税局の担当部課を訪れ、教えを請うたり、議論をしたりしたものである。単に疑問点について教えを乞うというのではなく、きっちりと勉強した上での礼を弁えた真摯な疑問点の照会やそれに関する議論については、彼らもその態度を評価しきっちりと対応してくれる。

 会社が新しく定型フォームとして契約書や伝票類を作成するような場合は印紙税法の観点からも充分に検討する必要がある。この検討を怠り課税物件であるにも拘わらず非課税物件と誤解し、長期間に亘りこれら契約書や伝票類を使用し続けると、後日に本来の印紙税の額とその2倍に相当する金額との合計額に相当する莫大な額の過怠税が課されることになる。

 契約締結の事実の証明を満足させつつ印紙税節税を狙って商法509条の規定を活用して新しい様式の伝票案を立案し、大阪国税局の担当官と何度も議論をした上でその納得を得て新様式の伝票を作成し、年間にして1億円近い額の節税効果を得たのも懐かしい思い出である。

 このときには、将来の国税当局の解釈変更の可能性に備えて、国税局担当官との意見交換の内容や結論をきっちりと取り纏め、会社の上司に対する報告書に添付しておき、この報告書自体を重要文書として保管しておいた。(国税当局から結論を示した文書を入手したかったのであるが、彼らがこの種の文書を民間企業宛に作成することはない、ということを知っていたので、その対応としてこのような方法を執った。)

 私の予想通り十数年後にこの伝票に関して課税問題が起こった。別の業務を担当していた私に相談があったので、私の報告書とそれに添付された文書を示すように指示したところ、今までの処理は全て認めた上で、今後の対応についての指導があったと聞いた。

(以上)

 

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