◇SH0052◇企業法務よしなしごと-ある企業法務人の蹣跚10 平田政和(2014/08/05)

そのほか法務組織運営、法務業界

(第10号)

企業法務よしなしごと

・・・ある企業法務人の蹣跚(まんさん)・・・

平 田 政 和

Ⅰ.Freshmanのために・・・若いうちにこれだけはやっておこう(その7)

【印鑑・印影、契約名義人やその表示、確定日付についての基本的な知識を得る】

 関係各部からの依頼にもとづき作成した契約書について、依頼部署から、誰の(どの役職の人の)印鑑を押せばいいのか(契約名義人を誰にするのが妥当か)、どのような印鑑をどこに押すか(職印の押印が必要か、個人印でもよいのか、個人印を押す場合実印を押す必要があるか)、収入印紙が必要か、収入印紙の消印はどのようにするのか、社印や部課印を押す必要があるか(これらが押印されていない契約書をどう考えるのか)、訂正するときにはどのようにするのか、などと印鑑やその押捺について照会されることがよくある。

 いろんな折に印鑑を押した経験からなんとなく知っているように思いがちであるが、新人の法務部員としては、「契印、割印、捨印、消印、訂正印」や「実印、認め印」の意義や法律的な意味について、その違いも含めて自ら勉強するとともに先輩に教えを請い、きっちりと理解しておく必要がある。

 かつてのように和文タイプライターを使い一字一字和紙に印字するのではなく、最近では、パソコンとプリンターを使って洋紙にプリントアウトして契約書を作成するために契約書に誤記やタイプミスがあった場合でも簡単に訂正ができる。しかし、法務部員としてはいざというときのために、正しい「契約書条文の訂正の仕方や訂正印の押し方」も覚えておかなければならない。

 さらに契約名義人を誰にするか、その場合その名義人の職印を押さなければならないのか、個人印でもよいのか、社印や部課印の押捺は必要かといったことについても理論付けて理解しておくことが肝要である。

 伝票形式の契約書類(注文書、注文請書、出荷指図書など)でよく見かける「○○株式会社」とだけ記載され社印だけが押されている場合や「○○株式会社△△営業部」と書かれ個人印だけが押されている場合の対応策についても考えておく必要がある。多くの意思表示がデータ化され伝票類の活用が少なくなってきているとはいえ、法律的な観点から基本的な考え方を理解し、身につけておくことの必要性は変わらない。

  「確定日付」については、その意義を法律に則して理解するとともに何処へ行きどのようにして取り付けるのか、簡単なことであるが取り付けのための手続を具体的に知っておくのが望ましい。確定日付が法律的に必要とされる場合と実務上取り付けておいた方が望ましい場合についても先輩に教えを請い、自分の知識としておくべきだろう。

 かつて営業部門のトップに頼まれて、「契約、出荷、納品についての実務を法律の観点から読み解く」という講義を全ての営業担当課を対象に個別に行ったことがある。始業前にその課の担当者全員を集めて、その課が過去一ヶ月間に発行した伝票の控や受け取った伝票の本紙をもとに法律の観点から問題点を指摘し、改善策を話した。

 甲という商品を扱っているある課で乙という商品についての伝票があり、私の疑問に、担当者は「それは甲の書き間違いで、甲と読み変えて出荷し、代金を請求した。」と答え、同席者の失笑を買ったということもあった。また注文単価や出荷先が「いつもの通り」と書かれていた伝票もあった。

 このとき「○○株式会社」とだけのゴム印が押され、社印と担当営業部長の印鑑が押された伝票について、私の「○○株式会社××営業部長△△△△(個人名)と記載し、△△△△さんの印鑑を押してもらうのが正しいやり方で、そのようにする必要がある。」との指摘に際し、「頼んでも面倒だと言ってそのようなことはしてくれない。」との答が返って来た。それなら「そのようなゴム印を作って相手方に渡し、うちの法務部がうるさく言うのでこれを使って欲しい、と言ったら。」と回答したが、この結果はどうなったのだろう。

(以上)

 

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