◇SH0077◇インドネシア:ジャカルタ高裁、言語法に関する西ジャカルタ地裁判決を支持 前川陽一(2014/09/08)

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インドネシア:ジャカルタ高裁、言語法に関する西ジャカルタ地裁判決を支持

 

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 国旗、国語、国章及び国歌に関する法律(2009年法第24号)(以下「言語法」という。)違反を理由として米国法人とインドネシア法人との間の貸付契約を無効とした2013年6月20日西ジャカルタ地方裁判所判決(以下「2013年地裁判決」という。)に対して被告米国法人が控訴していたところ、2014年5月7日、ジャカルタ高等裁判所は一審を支持し控訴を棄却していたこと(以下「本判決」という。)が近ごろ明らかになった。(本件の事案の概要及び契約の締結言語に関する言語法の規定についての解説は、福井信雄弁護士の執筆による「言語法を巡る紛争の今」商事法務タイムライン7月24日号を参照されたい。)

 本判決は、2013年地裁判決を法的に正当と認めたうえ、控訴人による新たな事実の摘示もなかったと述べて、2013年地裁判決を全面的に受け入れ、控訴人米国法人の主張を退けた。本判決が2013年地裁判決を法的に正当と判示したことで、2013年地裁判決の判断が高裁で軌道修正されることを願っていた実務界の期待は打ち砕かれた。もっとも、本稿執筆時点ではいまだ当事者への本判決の通知手続中とのことであり、本判決に対してさらに上告するという道も残されている。最高裁への上告は、本判決が当事者に正式に通知されてから14日以内に行わなければならない。

 インドネシアにおいては、判例の先例拘束性はないと考えられていることから、仮に本判決がこのまま確定することになったとしても、理論的には後の同様の事案において必ず同様の判断がされるとは限らない。また、インドネシアの司法機関に対する信頼性は決して高いとは言えないことから、契約実務においてもこの判決内容に沿った運用、すなわちインドネシア語併記の契約書を作成するという実務がどの程度浸透するかという点については現時点では予測が難しい。しかしながら、インドネシアの当事者から言語法違反を理由とする契約無効を主張される実務上のリスクは一段と高まったと評価できることから、かかるリスクを回避するためには、100%子会社との契約などこのようなリスクがほぼないと考えられる特別な場合を除いては、契約締結時点においてインドネシア語を併記した契約書を準備するべきであろう。

 

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