◇SH0139◇最二小判 平成26年7月18日 貸金業者登録拒否処分取消等請求事件(小貫芳信裁判長)

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 貸金業法3条所定の登録(以下「貸金業登録」という。)を受けた貸金業者であるXは、平成22年11月4日、大阪府知事に対し貸金業登録の更新の申請をしたが、大阪府知事は、同年12月15日、Xに対し、Xの監査役が執行猶予付き禁錮刑の判決を受けており貸金業法6条1項4号に該当するため、Xは同項9号の登録拒否事由に該当するとして、上記申請を拒否する旨の処分をし、また、Xは同号に該当するに至ったため同法24条の6の5第1項1号の登録取消事由に該当するとして、Xの貸金業登録を取り消す旨の処分をした。
 本件は、Xが、監査役は貸金業法6条1項9号の役員には含まれず、Xは同号及び同法24条の6の5第1項1号のいずれにも該当しないなどと主張して、Y(大阪府)を相手に、上記各処分の取消し等を求めた事案である。

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 本件の争点は、貸金業法4条1項2号により定義されている同法6条1項9号の「役員」に監査役が含まれるか否かという点である。
 貸金業法4条1項2号は、同号の「役員」の定義につき「業務を執行する社員、取締役、執行役、代表者、管理人又はこれらに準ずる者をいい、いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し、これらの者と同等以上の支配力を有するものと認められる者として内閣府令で定めるものを含む。」と規定しており(以下、これを「本件定義規定」という。)、同法6条1項9号の「役員」も本件定義規定により定義されている。
 第1審は、株式会社の監査役はその業務執行について強い影響力を持ち得るなどとして、監査役は本件定義規定の「これらに準ずる者」に該当するものとして貸金業法6条1項9号の「役員」に当たる旨判断し、Xの請求を棄却した。
 これに対し、原審は、監査役の権限は取締役等の有する権限に比して間接的かつ事後的なものであり、監査役の権限が直ちに取締役等に準ずるものということはできないなどとして、監査役は本件定義規定の「これらに準ずる者」には該当せず、貸金業法6条1項9号の「役員」に当たらない旨判断し、1審判決を破棄し上記各処分の取消請求をいずれも認容した。
 上告人がこれを不服として上告受理申立てをしたところ、第二小法廷は、本件を上告審として受理した上、判決要旨のとおり、本件定義規定により定義される貸金業法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれない旨判断し、上告人の上告を棄却した。

 貸金業の規制等に関する法律は、いわゆる議員立法として、昭和58年4月に成立し、同年5月に公布されたものである(平成18年法律第115号により「貸金業法」に題名改正)。そして、本件定義規定と同様の定義を定めていた同法4条1項2号につき、同年9月に発出された大蔵省銀行局長通達「貸金業者の業務運営に関する基本事項について」第1の3イは、同号にいう「これらに準ずる者」に監査役が含まれると解しており、現行の貸金業法においてもその所管庁において上記通達の解釈が踏襲されている。
 しかし、貸金業法は、役員の定義を定める規定(以下「役員定義規定」という。)を本件定義規定のほかにも置いているところ、本判決が説示するとおり、貸金業法中の役員定義規定には、本件定義規定と同様に監査役を列記しないものとこれを明文で列記するものとの各類型の規定が併存しており、しかも、これらの定義規定を新設する改正の度に、同法4条1項2号中の本件定義規定の及ぶべき範囲の定めが改正されていることからすると、同法中の役員定義規定において監査役を明文で列記するかどうかは、あえて区別して差異が設けられているものといえる。このように、貸金業法中の各役員定義規定の間で監査役の列記の有無につき区別して差異が設けられている中で、本件定義規定にはこれが列記されていない以上、本件定義規定により定義される役員に含まれる者の範囲に関する解釈が事業を営むのに必要な登録の取消し等の不利益処分の要件に関するものであることに鑑みても、本件定義規定にいう「これらに準ずる者」に監査役が含まれると解することは困難であるといわざるを得ない。
 また、本件定義規定のいわゆる黒幕条項、すなわち、「いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し、これらの者と同等以上の支配力を有するものと認められる者として内閣府令で定めるものを含む。」についても、本件定義規定の委任に基づく貸金業法施行規則2条に監査役は掲げられていないため、監査役は上記内閣府令で定めるものには該当しない。
 本判決は、以上のような観点から、本件定義規定により定義されている貸金業法6条1項9号の「役員」に監査役は含まれないと解したものである。

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 ところで、本件定義規定のように、業務を執行する社員や取締役などを列記した上で(監査役は列記せず)「これらに準ずる者」という表現を用いる役員定義規定は、貸金業法以外の法律にも多数存在しており、大きく分けて3つの類型がある。
 1つ目は、本件定義規定並びに貸金業法24条の27第1項3号及び31条8号と同様に、いわゆる黒幕条項の対象が下位法令に委任されている類型のものであり、例として割賦販売法32条1項4号がある。
 2つ目は、いわゆる黒幕条項の対象が下位法令に委任されていない類型のものであり、宅地建物取引業法5条1項2号、廃棄物の処理及び清掃に関する法律7条5項4号ニ、警備業法3条10号などがある。
 3つ目は、判文中で紹介されている貸金業法24条の6の4第2項のように、いわゆる黒幕条項がない類型のものであり、建設業法7条1号や不動産の鑑定評価に関する法律23条1項2号などがある。
 なお、以上はいずれも監査役を列記しない類型のものであるが、判文中で紹介されている貸金業法41条の13第1項4号及び41条の39第1項4号のように、業務を執行する社員や取締役に続けて監査役を列記する類型のものとして、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条3項や破産法177条1項などがある。
 そして、監査役を列記しない類型の役員定義規定において、「これらに準ずる者」に監査役が含まれるか否かにつき、各法律の所管庁の通達等の行政解釈や所管庁の職員等が執筆した解説書に示された解釈をみると、必ずしも統一的な解釈はされていない。例えば、通達等の行政解釈をみると、建設業法の行政解釈(総合政策局建設業課長「建設業許可事務ガイドラインについて」第7条関係1(1)(2))では、監査役は「役員」に含まれないとされているのに対し、警備業法の行政解釈(警察庁生活安全局長「警備業法等の解釈及び運用基準について」第3の10(3))では、監査役は「役員」に含まれるとされている(そのほか、所管庁の通達において監査役が「役員」に含まれるとされているものとして、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律3条8号、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律6条5号などがある。)。また、所管庁の職員等が執筆した解説書に示された解釈をみても、宅地建物取引業法(宅地建物取引業法令研究会編『宅地建物取引業法の解説〔5訂版〕』(住宅新報社、2010)58頁)や不動産の鑑定評価に関する法律(不動産鑑定法令研究会『逐条解説不動産鑑定評価法』(ぎょうせい、2006)171頁)では、監査役は「役員」に含まれないとされているのに対し、割賦販売法(中崎隆〔経済産業省取引信用課課長補佐〕『詳説改正割賦販売法』(金融財政事情研究会、2010)200頁)や廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法編集委員会『廃棄物処理法の解説 平成24年度版』(日本環境衛生センター、2012)92頁)では、監査役は「役員」に含まれるとされている。
 以上のように、他の法律の役員定義規定における「これらに準ずる者」に監査役が含まれるかどうかについて各所管庁の解釈は分かれているが、本判決は、貸金業法中の各役員定義規定には監査役を列記する類型のものがあり、その列記の有無につき区別して差異が設けられていることなどに着目し、これが列記されていない本件定義規定についてはその列記の有無の差異に則して監査役は含まれないと解したものであり、このような本判決の説示に照らすと、本判決の射程は貸金業法限りのものであるといえ、他の法律の役員定義規定について本判決の射程が及ぶものではないと考えられる。
 もっとも、他の法律の役員定義規定のうち「これらに準ずる者」として監査役が「役員」に含まれるとする行政解釈等が示されているものに関しては、本判決の事実上の影響として一定の範囲で解釈上の疑義が生じ得ることは避け難いと考えられることから、そのような影響を受けるものについては、今後、当該法律の役員定義規定又はその委任に基づく府省令の規定(いわゆる黒幕条項の具体例の定め)の改正などの立法的な手当てや、あるいは、従前の行政解釈の見直しなどといった、解釈上の疑義を解消するための措置が必要に応じて採られることが望まれるところである。

 本判決は、大蔵省銀行局長通達を踏襲する所管庁の解釈を採用せず、本件定義規定により定義される役員に監査役が含まれない旨を明らかにしたものであり、実務上重要な意義を有すると考えられるため、紹介する次第である。
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