(第57号・最終号)
企業法務よしなしごと
・・・ある企業法務人の蹣跚・・・
平 田 政 和
【ありがとうございました】
(前号より)
会社をリタイアした後にも、後輩からの質問や相談は歓迎し、真面目に対応したが、会社に出向き、歓迎されるのをよいことに先輩風を吹かす、というようなことは一切しなかった。大部の資料をもとに面談し意見交換する必要があったとき以外は、全てメールや電話で対応した。
「皆さんが喜ばれるので、ぜひ会社に来て下さい。」という優しい申し出を何度もしてくれたが、この言葉に甘えることはしていない。最近ではさすがに質問や照会のメールや電話はなくなったが、暑気払い、忘年会と名目をつけた懇親会への誘いはある。これには喜んで応じている。
企業法務関係の各種研究会、経営法友会の幹事会、同業界の法務責任者で作った法務懇話会などの企業法務に関する場で知った先輩、友人は数多い。今でも何人かとは機会を見つけては会い、一献を傾けて歓談する。
私が上京することを知れば、仲間を誘い懇親の場を設けてくれる友人もいる。いずれも尊敬に値するすばらしい仲間である。
企業法務という仕事を通じてこのような人達と出会い、いつまでも交流を続けられていることに感謝している。
今まで綴ってきた文章は、全て私の頭の中にあった内容を書き出したつもりであるが、脳に刻み込まれた先人の著書や論文の内容や言い回しあるいは先人から教えられた内容を、そのまま自分のものと勘違いして使ったことがあったかもしれない。
自分の脳の一部になってしまったこれらの知識を与えて下さった先輩に心から感謝するとともに先輩各位から与えられた知識が生半可な理解に留まっていないことを祈っている。
この文章を書くことにより改めて「私は企業法務が大好きだ。」、「企業法務は私の天職だったに違いない。」と確信した。再びこの世に生まれ変わったとしても、大学では法学部を選び(そしてそこではもう少し真面目に勉強をし)、職業として企業法務を選ぶだろう、と思ったことである。
そのときには企業法務は、会社や社会において、どのように位置付けられているだろうか。
1980年の経営法友会第1回大会のテーマは「企業における『法務』の確立と前進のために」だった。
第17回大会のテーマは「グローバル時代の企業法務―経営を支える法務部門の役割と課題」、そして直近(2014年11月18日)の第18回大会のテーマは「経営から期待される企業法務の機能とそれに応える人材について」だった。
法務部という組織は企業組織としては新しく、まだ成熟途上にある。社内外の活動においても、法務部の関与すべき業務がアプリオリに定まっている訳ではない。既存の業務を一層充実させるとともに、新たな分野、業務への挑戦がなされているだろう。
長期間、駄文を読んでいただいた読者に心から感謝して、この蹣跚を終わることとします。
皆様、ありがとうございました。厚くお礼申しあげます。
(完)
今回で「企業法務よしなしごと ある企業法務人の蹣跚」の連載を終了します。記念として3月18日(水)に「執筆者交流会」を開きます。執筆者にはかなり無理を申し上げての会合ですが、参加ご希望の方は、ここからお申し込み下さい。 商事法務ポータル編集部