◇SH0282◇銀行員30年、弁護士20年 第18回「受験勉強を始めたころ」 浜中善彦(2015/04/10)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第18回 受験勉強を始めたころ

 
弁護士 浜 中 善 彦

 司法試験の受験勉強を始めてしばらくは、従来同様夜型の生活であった。定時出勤、定時退社とはいえ、実際には、打ち合わせや飲み会などあるから、いつも定時退社とはいかない。そのため、夜型だと毎日一定の勉強時間を確保することが難しいことがわかった。そのため、まず、夜型の生活習慣を朝型に変えることにした。具体的には、毎日朝5時に起きて、朝食前の1時間半か2時間を勉強時間に充てることにした。はじめのうちは目覚まし時計のお世話になったが、慣れると、自然とその時間に起きることができるようになった。
 土日や祝日の休日は、東大図書館で朝から晩まで一日中勉強した。私は結婚が遅かったので、まだ幼かった下の男の子が、出かけるとき、大声で泣いて行かないでくれといったのが辛かった。
 

 基本書の選択については、合格体験記その他を読んで決めた。大学を卒業して20年も経っていたから、学生時代の教科書は全く使いものにならなかった。
 実際に勉強を始めてみて一番驚いたのは、憲法であった。憲法は佐藤幸治先生の教科書を使ったが、憲法訴訟というまるっきり聞いたこともない言葉が出てきていることであった。学生時代に聴いた講義は、かなりイデオロギー的な解釈というイメージがあったが、全く違って客観的な解釈法学という印象であった。
 民法は、有斐閣の双書を使った。これは、我妻榮先生の講義をベースにしていると思われてそれほど違和感はなかった。
 刑法は担当が団藤重光先生であったから、学生時代は行為無価値論であったが、基本書は、結果無価値の前田雅英先生の教科書を使った。行為無価値から結果無価値に変えたのは、前田先生の教科書が分かりやすいこともあったが、答案を書くとき結果無価値の方が書きやすいように感じたからである。
 民訴はまるっきり勉強したことがなかったので、当時評判の新堂幸司先生の教科書や三ヶ月章先生の「民事訴訟法」(弘文堂)などを読んだが、最終的には共著の大学講座双書に決めた。しかし、最も感激したのは三ヶ月先生の民事訴訟法であった。著者の情熱が読者に直接伝わるような名著であり、法律学とはこんなに面白いものかと実感させられた。基本書にしなかったのは、受験用としては内容的にやや足りない感じがしたからである。
労働法は、菅野和夫先生の労働法で決まりである。
 

 予備校にも時間の都合がつく限り通うようにした。土日は、答練があるときは欠かさず通うことにしていた。4、5年してからであったか、時々模範答案に選ばれるようになった。
 予備校の講義で今でも忘れられないのは、弁護士の橋本副孝先生の民事訴訟法の講義である。講義は先生の作成したレジュメを使用したが、これが非常によくできていた。講義も極めて明快であった。その後弁護士になって、偶然、同じ第二東京弁護士会(二弁)に所属することになって、親しくお付き合いするようになった。大学卒業は私が13年先輩であるが、私が修習期49期であるのに対して先生は31期であり大先輩である。先生は二弁の会長をされるなど、弁護士として今でも尊敬している。
 
以上
 
タイトルとURLをコピーしました