銀行員30年、弁護士20年
第22回 法人の顧問弁護士として
弁護士 浜 中 善 彦
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5年間使用人弁護士として働いた後、独立した。齋藤弁護士と一緒に四谷3丁目のビルの1室を借りて、浜中・斎藤法律事務所を設立した。
大変ありがたいことに、使用人弁護士時代、法律相談だけではなく、頼まれて意見書を書いたりしたことがあった公益財団法人、東京都第三セクター、上場企業等6社から顧問契約の話を頂戴した。それも破格といっていい好条件であった。そのため、事務所経営について、経済的な心配はしなくて済んだ。
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専門というほどではないが、私がメインにしているのは、会社法、労働法、金融関連の法律等である。労働法の関係は使用人側であり、労働者側の事件は扱わない。
顧問先からは、いろいろな質問があるが、電話やFAXはほとんどなく、いずれもメールである。質問に対しては、原則として、質問があったその日に回答することにしている。原則としてと書いたのは、午後5時を過ぎて自宅に帰ったとき自宅にメールが来ている場合は、5時以降は仕事をしないことにしているので、その日にメールしないからである。そのかわり、翌朝、午前5時過ぎに起きて回答を書いて、担当者が出勤したときには相手に回答が届いているようにしている。
しかし、他に急ぎの仕事があったり調べる必要があるなど、すぐ答えられない場合には、いつまでに回答すればいいかをメールで確認する。仮に月曜日に質問があって、今週中にと指示された場合には、必ずその数日前に回答する。論文を書くわけではないから、調べるのに何日もかかることはまずない。
ビジネスの現場では、毎日新しい仕事が発生しており、できるだけ早く処理をして、仕事がたまらないようにすることが鉄則である。そのためには、疑問についてはできるだけ早く回答がほしいのである。弁護士の都合で仕事をするなどは、許されることではない。いかに回答が立派であろうとも、期限ぎりぎりでは、管理者としては対応に困る場合がある。弁護士の仕事に限らないが、仕事が遅いのは無能の証拠である。
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私がメールに対して即答できるのは、PCとワープロのお蔭である。
私は75歳であるが、ワープロはブラインドで打てる。ワープロがなければ、私は、現在の仕事量を1人でこなすことはできない。ワープロは、キャノワードが初めて銀行の支店に配置されたとき、キャノン販売のワープロ講習会に自費で通った。ワープロの指使いはその時覚えた。
そのため、私は、顧問先に対する回答だけではなく、裁判所への提出書面等もすべて自分で起案する。そのため、書面作成は全て自宅でする。それをメールで事務所に送って、事務所に預けてある職印を押してもらって裁判所に届けてもらう。そのため、事務の女性に書面の作成を依頼することはない。
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顧問先の職員、社員等と打ち合わせが必要な場合には、事務所へ来てもらうのではなく、顧問先へ行くのを原則にしている。事務所へ来てもらうと、たいていは複数の職員や社員がくる。そのあと会社へ帰って、上司に報告するとなるとそれだけ時間が無駄である。こちらが行けば、それらが一度に済むからである。その場合、日当の請求はしない。
以上