銀行員30年、弁護士20年
第34回 予備試験で司法試験を目指す選択
弁護士 浜 中 善 彦
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平成23年から、司法試験予備試験が導入された。予備試験に合格し、司法試験に合格すれば法曹になることができるという制度である。もともとは、経済的理由を抱えた人などにも法曹への道を開く例外措置として導入されたが、平成26年は予備試験志願者が法科大学院志願者11,450人を上回る12,622人となった。合格率も予備試験の66.80%(合格者163人)は、法科大学院合格率トップの京都大学53.06%(合格者130人)を上回り、3年連続でどの法科大学院よりも高かった。そのため、法曹養成制度改革の一環として、受験資格を制限する案などが浮上している。
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そのような制度論は別として、働きながら弁護士資格取得を目指す人にとっては、法科大学院への通学に比べると、経済的にも負担が軽く、時間的にも自由度が高いなど、メリットが大きい。
私の場合は旧試験であるが、制度的には予備試験に類似した経験なので、参考までにその経験の一端を紹介する。勉強時間数を、合格前の3年間の記録でみると以下のとおりとなっている。なお、この場合の数字は、前年の短答式試験終了の翌日から起算して、短答式試験前日までの記録である。
平成3年5月まで | 1,210 時間 | |
平成4年5月まで | 1,380.5時間 | |
平成5年5月まで | 1,206 時間 | |
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3年間合計 | 3,796.5時間 | 年間平均 1,265.5時間 |
平成5年5月までとその前年の1年間の各科目別の時間配分結果を記すと以下のとおりであった(括弧内は前年実績)。
憲法 | 223.5 | 時間 | ( 206 ) |
民法 | 391 | 〃 | ( 348 ) |
刑法 | 259 | 〃 | ( 298.5 ) |
会社 | 68 | 〃 | ( 116.5 ) |
手小 | 78 | 〃 | ( 129 ) |
民訴 | 100 | 〃 | ( 141.5 ) |
労働 | 86.5 | 〃 | ( 141 ) |
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合計 | 1,206 | 〃 | ( 1,380.5 ) |
年間の勉強時間合計の最高は、平成元年(昭和64年)の前年の1,442時間である。
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仮に合格に必要な最低勉強時間を8,000時間、年間1,400時間勉強するとすると5.7年必要ということになる、ただし、私の場合は、大学法学部を卒業して20年も経っており、訴訟法は全くの未習であったから、文字通りの未習者である。しかし、仮に一度は司法試験受験を経験した人や、仕事として法務部などで日常的に法律を扱っている人たちの場合はもう少し条件がいいように思われる。
働きながら夜間の法科大学院へ通学するか、予備試験受験を選択するかは勤務場所や個人的理由などでどちらが有利ともいえないと思われる。いずれを選択しても容易な道ではないが、挑戦し甲斐のある目標ではないであろうか。
以上