◇SH0314◇銀行員30年、弁護士20年 第27回「東京臨海三セクの民事再生申立事件」 浜中善彦(2015/05/15)

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銀行員30年、弁護士20年

第27回 東京臨海三セクの民事再生申立事件
 
弁護士 浜 中 善 彦
 
 

 平成18年(2006年)5月12日東京地裁に、東京都の第三セクター3社の民事再生手続開始の申立てを行い、同年12月20日認可決定、翌平成19年4月16日に終結決定があった。私は、本件申立の代理人代表弁護士を務めた。
 

 3社とは、株式会社東京テレポートセンター、竹芝地域開発株式会社及び東京都臨界副都心建設株式会社である(以下、3社を「臨界三セク」という。)。
 臨界三セク3社は、全国にある第三セクターのなかでも最大規模の会社であり、本件は、第三セクターの倒産処理事件としてはいうまでもなく、それまでの民事再生申立事件においても最大規模の事件であった。具体的には、3社で債務総額約3800億円、うち金融債務が金融機関協調融資団27社に対して約3500億円であった。
 

 本件の場合、問題は取引金融機関の同意をいかにして取り付けるかということにつきるというのが私の考えであった。そのためには、合理的な再生計画案を示せるかどうかが最大のポイントである。
 私は、臨界三セクの顧問弁護士ではあったが、それまで倒産事件については全く経験がなかったが、倒産法の知識や経験は共同受任してもらう弁護士に頼めばいいと考えて、特に心配はしなかった。また、金額については、銀行員時代、大型融資案件で協調融資については何件も経験があったから、金額については格別驚くということはなかった。本件の場合は、金額の多寡が問題なのではなく、再生計画について合理的説明ができるかどうか、換言すると、各金融機関の担当者が役員決済を受ける場合の稟議を書くのに必要十分な資料を提供できるかどうかがポイントであると考えたのである。
 

 当時私は浜中・斎藤法律事務所のいわゆる街弁であったが、本件を受任するについては、受験時代の仲間であった原後綜合法律事務所の杉山真一弁護士に共同受任を依頼した。人選もほとんど彼に任せた。倒産法については、彼の友人であり、倒産法が専門の高井章光弁護士、他の3人は原後事務所の若手3人に依頼をした。若手3人のうちの秋山淳弁護士は登録して1年目であり、牧田潤一朗、横山佳枝弁護士は登録2年目であった。
 監督委員は須藤英明弁護士であった。私は、監督委員が須藤弁護士に決まったとき、本件はきっとうまくいくと確信した。須藤弁護士と私は仕事では接点はなかったが、弁護士会の会派が同じであったので、従前から面識はあった。あまりお話をしたこともなかったが、先生は、倒産法の大家であるだけではなく、人格的にもきわめて立派な人だという尊敬の念を持っていた。そのため、きちんとした説明をすれば、あまり些末なことをいわれることなく認めてもらえるという信頼感があったのである。しかし、須藤先生は、倒産法にまるっきり素人の私と若い人たちだけでこれだけの大事件を処理できるのかと心配されたに違いない。
 

 私は本件では仕事らしい仕事をしたわけではないが、精神的なストレスは相当なものがあり、本件を担当している間、4回も自宅で失神して救急車のお世話になり、妻にいわせると、しょっちゅう寝言で仕事のことをいっていたという。
 実際の仕事は杉山、高井両弁護士の指揮の下、各金融機関の説得、裁判所との交渉等、すべて若い人たちがやってくれた。結果として、少額債権弁済後の債権者140人余の債権者全員が1人の棄権もなく、全員賛成で再生計画は認められた。
 
以上
 
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