◇SH0348◇銀行員30年、弁護士20年 第37回「期待される弁護士の職域拡大」 浜中善彦(2015/06/19)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第37回 期待される弁護士の職域拡大

弁護士 浜 中 善 彦

 

 弁護士増員に伴って新規登録弁護士の就職難が問題になっているが、弁護士会も業務委員会等で職域拡大の方策を検討するほか、各自治体、企業等に働きかけを行っている。企業内弁護士についてみると、平成26年6月現在で、全国で1,179人となっている。この数は、10年前の平成17年の123人に比べれば9.6倍であるが、弁護士全体との関係では3.3%に過ぎない。また、1,179人のうち、東京弁護士会、第一東京弁護士会及び第二東京弁護士会三会で995人、大阪弁護士会が70人となっており、東京、大阪を合わせると1,065人となり、全体の90%に上る。
 企業は、かつての行政指導による規制が緩和され、各企業ともガバナンスの重要性が高まっているほか、コンプライアンス(法令遵守)の要請が強く求められるようになってきた。そのため、弁護士も、自らの職務を、従来の裁判業務中心の考え方から法律業務へと意識の変革が必要である。企業内弁護士は、今後、弁護士にとって大きなマーケットであると思われるが、企業は、弁護士として法律知識はいうまでもないが、むしろ、強力な戦力として期待している。
 任期付公務員については、平成25年現在120人、平成21年では81人であった。自治体の常勤職員採用実績は、平成25年32人であり、平成21年の3人に比べれば増加はしているが、まだまだ、少ない。地方自治体においても、地方分権が進むなか、制定する条例の検討、市民に対する法的対応など政策形成への関与、リスク管理・コンプライアンスの強化等、弁護士が必要とされる場面は拡大してきているので、今後、さらなる増加が期待される。
 また、企業活動の国際化の進展に伴って、従来は一部渉外事務所の業務と捉えられてきた国際法律業務分野も今後大きく変化すると思われる。企業の海外進出のサポートはいうに及ばず、国内業務でも、国際的な取引問題が多くなると思われ、この分野におけるニーズもこれまでになく多くなることが見込まれる。

 

 現在、弁護士会も、これらの状況変化に対して、自治体への働きかけ等を行っている。たとえば、平成26年4月から、日弁連では、自治体等連携センターを設けて地方自治体のニーズの情報集約や自治体内弁護士の要請から任期終了後までのキャリアサポートを行っている。またひまわりキャリアサポートセンターでは企業内弁護士等へのサポート等を行っているほか、国際業務推進センターでは、海外業務に対応できる人材の育成を行っている。その他、大阪弁護士会行政連絡センターは、弁護士紹介、いじめ等学校問題や福祉・労働問題等の講師派遣等の支援を行っている。また、中小企業海外展開支援弁護士紹介制度を実施している自治体は、東京都のほか、神奈川、愛知、大阪、福岡等の府県がある。
 また、国でも、平成25年7月の「法曹養成制度改革の推進について」内「第2 法曹有資格者の活動領域の在り方」を踏まえ、法曹有資格者の活動領域の拡大に関する有識者懇談会を設置して、法曹有資格者の活動領域の拡大に向けた取り組み状況等について検討してきたが、法曹養成制度改革推進室は、本年5月21日、年間合格者数については目標を年1,500人以上とすべきであると提言している。この取りまとめ案は、法曹養成制度顧問会議に提出された。取りまとめ案は、7月15日の期限までに法曹養成制度改革推進会議の正式決定となる予定である。

以上

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