インドネシア:輸入ライセンス規制の改正
―製造業者による完成品輸入の例外を認める規定の復活-
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 前 川 陽 一
2015年12月23日付で、補完財、試験製品及びアフターサービス用品の輸入に関する商業大臣令2015年第118号(以下「令118号」という。)が制定された。令118号は、輸入業者番号に関する商業大臣令2015年第70号(以下「令70号」という。)で削除された製造業者による完成品輸入の例外規定を実質的に復活させたものである。
従来からインドネシア国内に営利目的で物品を輸入するためには、原則としてAPIと呼ばれる輸入業者番号を取得する必要があり、このAPIにはAPI-U(一般輸入業者番号)及びAPI-P(製造輸入業者番号)の2種類が存在する。API-Uは商社等が取得する完成品を輸入するための輸入ライセンスであり、API-Pは製造業者等が取得する自ら生産等に使用する資本財、原材料、補助材等を輸入するための輸入ライセンスである。一つの事業者が両方のAPIを取得することは認められず、いずれか一方のAPIに限り取得が可能とされている。
2012年に施行された輸入ライセンスに関する規制の改正では、所定の要件を満たすAPI-P保有者について、当局の承認に基づき、例外的に「試験製品」及び「補完財」という2種類の完成品の輸入を認めた。これによって同一グループ会社の製品等については、かかる承認を得たAPI-P保有者を通して輸入販売することによりインドネシア国内に流通させることが可能であった。
ところが、去る2015年9月に令70号が制定され、従前API-P保有者に例外的に認められていた試験製品及び補完財の輸入に関する規定が削除されたことから、今後は製造業者には一切の完成品の輸入が認められなくなるのではないかという懸念が広がっていた。(令70号に関する解説は、坂下大弁護士による前稿「輸入業者番号(API)に関する商業大臣令の改正」を参照されたい。)
令118号では、かかる完成品輸入に関する例外措置が明文上復活され、加えてアフターサービス用品についても完成品の輸入が明示された。これによって製造業者の上記懸念はいったんは解消されたと言えよう。なお、令118号は令70号と同じく2016年1月1日から施行されたため、この一連の改正が実務に与えたネガティブな影響は限定的であったと推測される。
当局からの承認に関連して、令70号制定前に用いられていたProdusen Importir(輸入製造業者)という用語に代えて、令118号ではPersetujuan Impor(輸入承認)という用語が用いられている。従前Produsen Importirの承認を受けたAPI-P保有者であって、かかる承認が2016年6月30日より前に期限を迎える場合、令118号に基づきその期限は自動的に同年6月30日まで延長される。したがって、以後も同様の承認を得ようと考えるAPI-P保有者においては、同日までに令118号に基づくPersetujuan Imporの申請手続をすべきこととなる。
なお、令118号の規定は1年おきに見直されることとされている。今回の措置は産業界や各国の商工会議所などの強い反発を受けての対応とも伝えられているところであるが、輸入ライセンス規制の動向については今後も引き続き注視していく必要があろう。
以 上