SH4461 ベトナム:個人データ保護に関する政令(下) 中川幹久(2023/05/30)

取引法務個人情報保護法

ベトナム:個人データ保護に関する政令(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 中 川 幹 久

(承前)

3 管理者・処理者(管理者兼処理者)に求められる主な対応

 政令13号は、個人データの処理の目的と方法を決定する者を「管理者」、管理者との契約を通じて管理者に代わって個人データの処理を行う者を「処理者」、個人データの処理の目的と方法を決定し同時に直接処理する者を「管理者兼処理者」とそれぞれ定義している。

 政令13号では、管理者と処理者との間で締結される契約において必要的に定められるべき事項等は特に明記されていない。しかしながら、政令13号上、処理者には、管理者との間で締結した契約に基づく個人データのみを取り扱い、かかる契約に従って個人データを処理する義務が課されていることから、両者間の契約では、少なくとも対象となる個人データを特定し、処理方法等を定めていることが想定されているものと考えられる。

 以下の各事項は基本的に管理者/管理者兼処理者(以下「管理者等」)が対応することが求められている。上述の通り、企業が保有する従業員に関するデータや、顧客に関するデータなどは広く個人データに該当する可能性が高く、ベトナムで事業を行っている企業の大部分は管理者等に該当することになると思われるため、7月の政令13号の施行に向け、以下のような義務を負うこととなるという前提で対応について検討を進める必要がある。

 なお、紙面の都合等もあり、本稿では管理者等に求められる主な対応のみを紹介するが、これら以外にも、例えば、データ主体の各種権利(アクセス権、訂正権、削除権等)の行使に72時間以内に対応する義務や、個人データ保護規制違反を探知した場合の本管轄当局への72時間以内の通知義務をはじめとして、ここでは紹介していない義務も存在する点にはご留意頂きたい。

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(なかがわ・もとひさ)

長島・大野・常松法律事務所ホーチミンオフィス代表。1999年慶応義塾大学法学部法律学科卒業。2003年第一東京弁護士会登録。2009年 Stanford Law School(LL.M.)卒業。2009年~2010年Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP(ニューヨーク)勤務。2011年11月から約2年半、アレンズ法律事務所ホーチミンオフィスに出向。ベトナム赴任前は、M&Aその他の企 業間取引を中心とした企業法務全般にわたるリーガルサービスを提供し、現在は、ベトナム及びその周辺国への日本企業の進出及び事業展開に関する支援を行っている。

 

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