メキシコの外資規制の概要
西村あさひ法律事務所
弁護士 松 平 定 之
1 外資規制の概要
メキシコは、基本的に外資に対して寛容な立場を採っており、外国投資家は、原則として、メキシコ企業の株式ないし持分の100%を取得することが可能である。
但し、1993年外国投資法により、対象会社の業種や規模に応じて、次表のような制限が例外的に存する。これらの規制に違反する投資持分の取得等は無効とされ、また、罰金の対象となる。外国投資委員会の事前承認を要する事項に関し、外国投資委員会は承認申請の受付(外国投資委員会が受付可能な内容を備えたものであることが前提)から原則として45営業日以内に回答を行うこととされている。
また、対象会社の業種や規模を問わず、投資の実行から40営業日以内に、Foreign Investment Registry への登録が必要である。
規制の種類 |
規制の内容
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対象業種等
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民間投資の禁止 |
国営とされ、外資を含む一切の民間投資の出資は禁止 |
原子力、放射性鉱物、送配電、衛星通信、電信、無線電信、郵便、通貨の発行、港湾・空港及びヘリポートの管理等一定の事業 ※ 従来国家に留保されてきた炭化水素、並びに、発電及び電力小売については、2013年の憲法改正により規制緩和が行われ、外資を含む民間投資が一定の限度で認められる。 |
外資の禁止 |
外資は出資不可 |
一定の国内陸上輸送(旅客及び貨物。宅配便を除く)、開発銀行その他一定の事業 |
外資の制限 |
外資の出資は一定割合までに制限されている |
運輸その他一定の事業分野。 ※ 商業銀行は1999年に、保険会社は2014年に、外資出資比率制限が撤廃された。 |
事前承認 |
一定の業種に属する会社の出資持分の49%超を保有しようとする場合、外国投資委員会の事前承認が必要 |
港湾サービス、鉄道、私立学校等 |
事前承認 |
一定の規模を超える会社の投資持分の49%超を保有しようとする場合、外国投資委員会の事前承認が必要 |
対象会社の総資産額が一定金額(2016年2月時点で約38億ペソ)を超える場合 |
なお、外国会社による支店・駐在員事務所の開設には、原則として経済省の事前許可を取得する必要があるが、2012年の規則改正により、日本・米国等の会社については、事前許可の取得が免除され、事業目的・設立国等の一定の事項を届け出れば足りることとなった。
2 外資規制への主な対応
外資規制の適用を受ける場合において、外国企業が一定の出資を行い、又は自らの出資に関する権限を可能な限り確保する手法として、次表のようなものがある。但し、これらの手法は、民間投資の禁止の類型では、利用できない。
対応策 |
内 容
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課 題
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Neutral Shareによる対応 |
議決権のない、又は議決権の対象が限定された事項に限られる “Neutral Shares” を保有することにより、経済的利益を確保する方法 |
外国投資委員会の承認が必要である。議決権がなく、又は議決権の対象が限定されるため、重要事項に関する拒否権を確保するためには、次の出資者間の合意を合わせて利用する必要がある。 |
出資者間の合意による対応 |
出資者間の合意により、マイノリティ出資者である外国投資家が、対象会社に関する一定の重要事項について拒否権を確保する手法。 |
他の出資者の同意が必要となる。これのみでは経済的利益を確保する手段とはならない。 |
以 上
(注)本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は執筆者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所又はそのクライアントの見解ではありません。