消費者庁、景品表示法の課徴金制度に関する事業者向け説明会資料を掲載
岩田合同法律事務所
弁護士 笹 川 豪 介
先般、消費者庁は、景品表示法の課徴金制度に関する事業者向け説明会の資料を掲載した。当該資料では、景品表示法の基本的な考え方や違反事例の具体例、また、違反した場合の課徴金の算定方法等について説明するとともに、事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置(以下「管理上の措置」という。)についても詳細に触れられている。
そこで、本タイムラインでは、管理上の措置について、その概要を説明する。
1.管理上の措置の概要
景品表示法では、管理上の措置として、「事業者は、……景品類の提供に関する事項及び……表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない」とされている(平成28年4月1日施行の改正法後の景品表示法7条1項)。
管理上の措置が十分でない場合には、段階に応じて、指導・助言(同法8条)、勧告(同法8条の2第1項)、公表(同上2項)の対象となるため、事業者としては、十分な注意を要する。
管理上の措置に関する「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(以下「本指針」という。)では、管理上の措置の具体的な内容として、下記2(1)~(7)の7項目が定められている。
2.管理上の措置の趣旨・ 具体例
当該7項目に関して、本指針では、その趣旨や具体例について以下のとおり規定している。
(1)景品表示法の考え方の周知・啓発
事業者は、不当表示等の防止のため、景品表示法の考え方について、表示等に関係している役員・従業員(商品説明、セールストークを行う者を含む)にその職務に応じた周知・啓発を行うことが求められる。
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(2)法令遵守の方針等の明確化
法令遵守の方針等の明確化については、必ずしも不当表示等を防止する目的に特化した法令遵守の方針等を、一般的な法令遵守の方針等とは別に明確化することを求めるものではなく、また、事業者の規模等によっては明文化せずに個々の従業員が認識することで足りることもある。
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(3)表示等に関する情報の確認
事業者には、以下の事項の確認が求められる。
- ① 違法とならない景品類の価額の最高額・総額・種類・提供の方法等
- ② とりわけ、長所や要点を訴求するための積極的な表示を行う場合には根拠となる情報
「確認」がなされたといえるかは、表示等の内容、検証容易性、事業者が払った注意の内容・方法等によって個別具体的に判断される。
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(4)表示等に関する情報の共有
上記(3)の情報を、事業者の規模等に応じて共有する。たとえば、代表者が表示等を管理している場合には、代表者が表示等に関する情報を把握していることで足りる。
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(5)表示等を管理するための担当者等を定めること
以下の事項を満たす表示等管理担当者を定めることが求められる。
- ① 自社の表示等に関する監視・監督権限を有する
- ② 複数存在する場合の権限・所掌が明確である
- ③ 研修等により景品表示法に関する一定の知識の習得に努めている
- ④ 表示等管理担当者の社内周知方法を確立する
(6)表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置を採ること
上記(3)で確認した表示等に関する情報を、対象商品・役務が供給され得る期間、事後的に確認するために、資料の保管等必要な措置を採ることが求められる。
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(7)不当な表示等が明らかになった場合における迅速かつ適切な対応
景品表示法違反やそのおそれがある事案が発生した場合、事案対処のため以下の措置を講じることが求められる。
- ① 事実関係の迅速・正確な確認(表示物・景品類と根拠情報の確認、関係従業員等からの聴取等)
- ② 確認した事実に即した誤認排除の迅速・適正な実施(新聞、自社ウェブサイト、店頭貼り紙等を利用した速やかな一般消費者への周知・回収)
- ③ 再発防止に向けた措置の実施(関係従業員等への教育・研修等の再実施等)
3.適切な管理上の措置を講ずるために
以上の管理上の措置の実施に当たっては、特に事業の規模が大きい場合、関係従業員等の教育や体制構築、マニュアル等の作成が不可欠である。
これらの管理上の措置につき、自社で策定・実施が困難な事業者であれば(自社で策定・実施が可能な事業者であってもその内容の確認のために)、弁護士等の外部専門家を活用することで、迅速かつ正確な管理上の措置の策定・実施が可能となろう。
その際には、必ずしも外部専門家が事業者の商品・役務や事業の実務を全て熟知しているわけではないことから、事業者と外部専門家が相互に知識・経験を共有することで、管理上の措置の実効性を高めることができるものと考えられる。
以上