◇SH0677◇マレーシア:マレーシア改正会社法案の可決と改正事項の一部紹介 長谷川良和(2016/05/31)

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マレーシア改正会社法案の可決と改正事項の一部紹介

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 長谷川 良 和

 

 2016年4月、マレーシア改正会社法案(Companies Bill 2015。「改正法案」)がマレーシア議会で可決された。改正法案は、会社法規制の負担軽減やコーポレートガバナンス向上等の観点から、現行マレーシア会社法(Companies Act 1965。「現行法」)の枠組みを大幅に改正するものとなっており、現在関係当局をはじめとして改正法施行に向けた準備が進められている。改正法案の内容は多岐にわたるが、以下では株式有限責任会社を念頭に置いて改正法案のうち特に日系企業の関心が高いと思われる事項にポイントを絞ってその一端を簡潔に紹介する。

1.   非公開会社の会社設立・運営に係る人的負担の軽減

  1.   改正法案の下では、非公開会社(private company。以下同じ)については、株主1名及び所定の居住取締役1名を有していれば、会社の設立及び運営が可能となる。これは、会社(持株会社が発行済株式全てについて株主となる会社を除く。)が6ヶ月超に亘り株主数2名未満の状態で事業を行うことを禁止し、また最低2名の居住取締役を必要とする現行法に比べ、会社設立及び運営に係る法規制負担を軽減するものである。

2.   定款の採否

  1.   現行法の下では、会社は定款を定める必要があるが、改正法案の下では、定款を有することも有しないこともいずれも可能となる。具体的には、会社が定款を定めない場合には、会社、取締役及び株主は、改正法案に規定された権利及び義務等に従うことになる。なお、改正法施行前に関連法令に従って定められた基本定款及び付属定款は、改正法案の下で引き続き定款として扱われることになる。

3.   非公開会社の定時株主総会の開催任意化

  1.   改正法案の下では、非公開会社に関して定時株主総会の開催が義務的ではなくなり、非公開会社は各事業年度の計算書類等について各事業年度の末日から6ヶ月以内に株主回覧を行うことが必要となる。

4.   非公開会社の株主書面決議の決議要件緩和

  1.   非公開会社においては、現行法の下では株主による書面決議について全株主の署名が必要とされていたが、改正法案の下では、株主の必要な過半数の署名をもって書面決議を有効に可決することが可能となる。

5.   額面株式制度の廃止

  1.   改正法案の下では、額面株式制度が廃止される。その結果、改正法施行前に発行済の株式も含めて無額面株式として扱われることになる。

6.   取締役の義務違反に対する罰則強化

  1.   改正法案の下では、会社法規制の負担軽減等に向けた改正がなされる一方、取締役による会社法違反に対する罰則が強化されることになる。

7.   新たな類型の減資手続の導入

  1.   改正法案の下では、定款に別段の規定のない限り、減資実行直後に会社に支払不能事由がないこと等について全取締役が書面で意見を述べること、株主総会の特別決議その他の法定要件を充足することにより、裁判所の命令を得ずに払込済株式資本の株主への返還を伴う減資が可能となる。その結果、現行法下におけるよりも迅速に当該減資を実施することが可能になると期待されている。

8.   新たな類型の再建型会社倒産手続の導入

  1.   改正法案は、更生管財人の選任を伴う会社更生手続(judicial management)及び新たな会社任意和議手続(corporate voluntary arrangement)の導入を予定している。新類型の導入により、現行法に比べ再建型会社倒産手続の選択肢が多様化することになる。

 

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