◇SH0764◇中南米諸国向けファイナンス取引に関する考察―ブラジル編(1) 杉山泰成 松本直己(2016/08/22)

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中南米諸国向けファイナンス取引に関する考察

ブラジル編(1)

西村あさひ法律事務所

弁護士 杉 山 泰 成

弁護士 松 本 直 己

 

1 日本の金融機関によるブラジル法人に対するファイナンス

(1) 一般的なファイナンス取引

 ブラジルにおいて金融機関はローン、ファイナンス/オペレーティングリースなどバラエティーに富んだ金融サービスを提供しており、ブラジル法人は国内、国外を問わず様々な金融ソースから融資を得ることができるようになっている。

 外国金融機関がブラジルの法人・個人に融資をする場合、行政機関による事前・事後の許認可等の取得は不要とされており、日本の銀行やノンバンクがクロスボーダーで融資を行うに際しては、ブラジルの銀行・金融業の免許・登録等は要求されていない。但し、金融取引(融資金額、適用金利、支払い条件など)をブラジル中央銀行(Banco Central do Brasil,”BACEN”)の電磁的登録システム(SISBACEN)を通じて登録しなければならない。貸付及び返済に関する海外送金手続を行うためにもこの登録を履践することが必要である。また、この際には契約書をポルトガル語訳しなければならない。

(2) 準拠法・裁判管轄の問題

a. 準拠法
 Law of Introduction to the Civil Code(Decree Law No.4.657/42)第9条によると、契約上の債務はその成立地の法律に準拠すると規定されているが、国際間の契約においては、ブラジルの主権、政策、公序良俗等に反しない限り、自由な準拠法選択が認められているようである。従って、契約条項等の解釈の予測可能性の高い日本法、ニューヨーク州法などを準拠法とすることも考えられる。但し、後述する管轄や執行の観点から、仮に外国法を準拠法として選択できる場合であっても、当事者の一方がブラジル法人であるときはブラジル法を準拠法とすることを薦める文献も存在する。

b. 管轄
 仮に契約上、外国裁判所の排他的管轄を定めていた場合であっても、ブラジルの裁判所は、ブラジルにおいて作成された契約書に関する訴訟について管轄権を有するとされる。

 また、外国における判決を執行する場合、事前にブラジル連邦最高裁判所の承認を受ける必要がある。承認申請に対して、被告は異議を述べることができ、承認がなされるまでに6ヵ月から20ヵ月間程度かかる可能性もある。尚、ブラジルでは、日本の裁判所の判決の執行承認が現状では認められているとは言えず、日本の裁判所を専属的合意管轄裁判所とすると二重の手続的負担を要することも考えられる。従って、日本の裁判所の管轄は非専属的合意管轄として、ケースバイケースの判断で直接ブラジルの裁判所に訴訟提起する余地を残しておくことが望ましいと考えられる。

c. 仲裁
 ブラジル仲裁法(Law No.9307/96)上、ブラジルの公序、政策に反しない限り自由に準拠法を選択することができる(同法2条1項)。但し、準拠法に限らず、国外で発せられた仲裁判断をブラジルで執行するためには、事前にブラジル連邦最高裁判所の承認を受ける必要がある。この承認手続には2年以上要するとの指摘もあり、留意が必要である。

 

2 ブラジルにおける人的担保の種類と手続及び効果等

 ブラジル法人に対する金融取引を行う場合の保全方法の一つとして、その親会社又は第三者から保証を取得することが考えられる。保証人が日本法人又は第三国の法人である場合の考察については、中南米諸国向けファイナンス取引に関する考察―メキシコ編(1) を参照のこと。また保証人がブラジル法人の場合には、ブラジル法上の人的担保を取得することも考えられる。

 ブラジル法上認められている人的担保には大きく分類して、Surety(fiança)及びAvalが存在する。各人的担保に関する概要は以下のとおりである。

 

保証の種類 保証の成立/手続

Surety(fiança)

  1. ・ 融資、コミットメントラインなどの直接信用取引(direct credit transaction)の支払い保証に用いられる。
  2. ・ 有効性及び法的拘束力を具備するためには、書面により作成され、Registry of Deeds and Documentsに登録する必要がある。
  3. ・ 主債務が有効である場合のみ有効とされる(付従性)。
  4. ・ 債権者は保証人に対して権利行使をする前に、主債務者の財産に対して執行をかけなければならない(日本法の検索の抗弁に近い。)が、保証人はかかる権利を放棄することができる(日本法の連帯保証に近い。)。

Aval

  1. ・ 日本の裏書きに類似する保証制度。
  2. ・ 約束手形など有価証券の支払保証に用いられる。
  3. ・ 保証人となる者が有価証券の表紙や裏にサインをし、”avalとして保証する”旨記載がなければならない。
  4. ・ 主債務と独立しており、主債務が無効となってもavalは有効である(附従性の排除)。
  5. ・ 主債務の全体を保証せねばならず、部分的な保証は禁止されている。

(以下、ブラジル編(2)に続く。)

 

(注)本稿は法的助言を目的とするものではなく、個別の案件については当該案件の個別の状況に応じ、日本法又は現地法弁護士の適切な助言を求めて頂く必要があります。また、本稿に記載の見解は、公開情報・資料をベースとした執筆者の個人的見解であり、西村あさひ法律事務所又はそのクライアントの見解ではありません。

 

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