中南米諸国向けファイナンス取引に関する考察
――ブラジル編(1)――
西村あさひ法律事務所
弁護士 杉 山 泰 成
弁護士 松 本 直 己
1 日本の金融機関によるブラジル法人に対するファイナンス
⑴ 一般的なファイナンス取引
ブラジルにおいて金融機関はローン、ファイナンス/オペレーティングリースなどバラエティーに富んだ金融サービスを提供しており、ブラジル法人は国内、国外を問わず様々な金融ソースから融資を得ることができるようになっている。
外国金融機関がブラジルの法人・個人に融資をする場合、行政機関による事前・事後の許認可等の取得は不要とされており、日本の銀行やノンバンクがクロスボーダーで融資を行うに際しては、ブラジルの銀行・金融業の免許・登録等は要求されていない。但し、金融取引(融資金額、適用金利、支払い条件など)をブラジル中央銀行(Banco Central do Brasil,”BACEN”)の電磁的登録システム(SISBACEN)を通じて登録しなければならない。貸付及び返済に関する海外送金手続を行うためにもこの登録を履践することが必要である。また、この際には契約書をポルトガル語訳しなければならない。
⑵ 準拠法・裁判管轄の問題
a. 準拠法
Law of Introduction to the Civil Code(Decree Law No.4.657/42)第9条によると、契約上の債務はその成立地の法律に準拠すると規定されているが、国際間の契約においては、ブラジルの主権、政策、公序良俗等に反しない限り、自由な準拠法選択が認められているようである。従って、契約条項等の解釈の予測可能性の高い日本法、ニューヨーク州法などを準拠法とすることも考えられる。但し、後述する管轄や執行の観点から、仮に外国法を準拠法として選択できる場合であっても、当事者の一方がブラジル法人であるときはブラジル法を準拠法とすることを薦める文献も存在する。
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