◇SH0842◇タイ:国王陛下崩御と日系企業が取るべき対応 佐々木将平(2016/10/18)

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タイ:国王陛下崩御と日系企業が取るべき対応

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 佐々木 将 平

 10月13日、かねてから長期入院中であったプミポン国王が崩御された。70年の長期にわたって在位し、国民の敬愛を集めていた国王の死は、タイ国民に大きな悲しみを与えている。王宮付近には弔問の国民が集まっており、また、街中でもほとんどの国民が弔意を示す黒服を着用している。

 タイの現代史上未経験の事態であることに加え、王室を対象とする不敬罪の存在を背景として、国王の崩御を想定した議論さえタブー視される風潮が存在したため、多くの日系企業も準備が万全とは言えなかったのではないかと思われる。対応に苦慮している企業も多いと思われるので、現時点(10月18日)の情報に基づき、日系企業が取るべき対応を整理したい。

 現時点で政府から発表されている要請の概要は、以下の通りである。

  1.  • 政府機関、教育機関すべてに10月14日から30日間半旗を掲げること
  2.  • 公務員及び政府機関の職員は10月14日から1年間喪服を着用すること
  3.  • 一般の国民には適正に判断することを求める
  4.  • 2016年10月14日は政府の公休日とする
  5.  • 娯楽・興業を1か月間控えることを求める

 民間企業に対しては具体的な服喪の要請は行われていないが、当面の間は上記に準じた取扱いをしておくのが無難と考えられる。具体的には、白黒の服又は喪章の着用を推奨する(喪服に代えて喪章の着用も認められる旨のアナウンスが出ている)、国旗を掲げる場合には半旗とする、祝事や華美なイベントは延期又は中止すること等が挙げられる。また、自社で取り扱っている商品、サービス、宣伝広告の内容についても、状況に照らして不適切なものがないか検証が必要となる。たとえば、10月14日以降、ウェブサイトの色調を白黒に変更している企業も多い。飲食店も通常通り営業しているところがほとんどであるが、派手な宴席やカラオケ等の遊興は当面控えるべきであろう。期間については、1か月程度が目処となると思われるが、今後の状況を注視すべきである。

 10月14日は政府公休日となったが、民間企業は祝日とする必要はない(タイの労働法上、企業の祝日は使用者が指定することとされているため、政府の公休日が民間企業の祝日に自動的になることは基本的にはない)。もっとも、法律上の必要はないが、従業員の弔問の便宜を図るために、特別の休暇取得を認める対応を取る企業もあるようである。

 企業として弔意を示す方法については、現時点では政府の専用窓口等は設置されていないが、今後そのような窓口が設置された場合には利用することも考えられる。

 現時点では、金融、物流、通関、株式市場、各種インフラ等を含めて、日系企業の事業運営に直接影響を及ぼすような混乱は生じていないが、引き続き、最新の情報を収集しつつ適切な対応を取る必要がある。

 

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