台湾:近時における台湾法の制定・改正の動向について
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 德地屋 圭 治
本稿では、近時における台湾法の制定・改正の動向について、紹介する。
1 日台租税協定
2015年11月26日、公益財団法人交流協会(日本の対台湾窓口機関)と亜東関係協会(台湾の窓口機関)との間で「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(「日台租税協定」)が締結され、その後日本での関連の国内法が整備され、2016年6月13日より発効した。台湾での課税に関しては、日台租税協定によれば、①日本企業が台湾でのいわゆる恒久的施設(PE)を通じて事業を行うのでない限り、日本においてのみ課税され、②台湾居住者が日本の居住者に支払う配当、利子及び使用料の税率については、従来の最大20%から最大10%の税率に引き下げられ、③日本の出張者の台湾での滞在が183日未満である等一定の条件を満たせば台湾で所得税は課税されないことになる。
日台租税協定は、台湾については、源泉徴収される租税に関しては、2017年1月1日以後に支払われる所得、源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、2017年1月1日以後に開始する各課税年度の所得に適用するとされている。
2 会社法
台湾の会社法における股份有限公司は、日本でいう取締役会及び監査役を設置した株式会社類似の会社形態であり、基本的には、株主が多数で、ある程度大規模な事業を行うことが想定されているが、株主が少数の場合に柔軟な会社運営を可能とするため、2015年7月1日に会社法が改正され、閉鎖性股份有限公司として、一定の特例を認めることとされた(2015年9月4日から施行)。すなわち、股份有限公司は、株主が50名以下の場合には、全株主の同意を得るなど一定の手続を経た上で閉鎖性股份有限公司となることができ、その場合、通常の股份有限公司とは異なり、①定款により株式譲渡の制限を設けること、②株主総会について、テレビ会議方式での開催及び書面方式による決議を行うことなどが可能とされた。
3 公平交易法
公平交易法は日本でいう独占禁止法に相当する法律であるが、2015年2月4日及び6月24日に改正がされた(それに伴う台湾競争当局の関連の公告なども改正等された。)。改正点は多岐に渡るが、主要な点としては、以下の点を挙げることができる。すなわち、①市場における独占的地位の濫用やカルテル等協調的行為の禁止規定などの違反に対するペナルティが強化された(例えば、独占的地位の濫用やカルテル等協調的行為に対する禁止規定違反の場合、状況により課することができる過料の最大金額が5000万新台湾ドルから1億新台湾ドルに引き上げられた。)。②企業結合申告(マージャーファイリング)の提出が必要となる場合の一つとして、従前、(非金融機関の場合)結合参加企業二社の各前会計年度売上高が(一方の企業)100億新台湾ドル超及び(他方の企業)10億新台湾ドル超とされていたが、これらの金額は(一方の企業)150億新台湾ドル超及び(他方の企業)20億新台湾ドル超に引き上げられた。③取引相手方に対する再販売価格の制限の約定について、従前、(当然に)無効とされていたが、改正により、正当な理由があれば再販売価格の制限が可能と定められた。