実学・企業法務(第8回)
第1章 企業の一生
同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー
齋 藤 憲 道
2. 会社の消滅の登記(日本)
(1) 解散・清算人就任・清算結了の登記
事業存続の意義を失った会社は、業務を終了して、解散する。会社法が定めている、定款で定めた存続期間の満了・定款で定めた解散事由の発生・株主総会の特別決議のいずれかの解散事由に該当すると、解散の登記を申請しなければならない(会社法471条)。
- (注) 他の解散事由に関しては、それぞれの登記手続きが定められている。例えば、合併して消滅会社になる場合は合併の登記と併せて行い、裁判所の破産手続開始決定・解散命令・解散判決による場合は裁判所書記官からの登記の嘱託(後述)によって行う。
会社は、解散後は、債権回収・債務弁済・残余財産の分配等の残務処理手続きに入り、清算結了までは(清算の目的の範囲内において)清算株式会社として存続するものとみなされる(会社法476条)。
解散によってそれまでの取締役等は職務権限を失う[1]ので、清算人が清算株式会社を代表して[2](それまでの代表取締役の立場で)清算業務を進める(会社法481条、483条)。清算人には取締役等が就任するのが原則だが、一定の清算株式会社については、裁判所が清算人を選任する(会社法478条1項、2項、3項)。
選任された清算人は、株式会社解散及び清算人就任の登記[3]を行い、会社の残務処理(清算)手続きを進めていく。
清算手続きが結了すると、清算結了の登記を行って、会社は完全に消滅する。
登記申請書には次の内容を記載して、登録免許税2,000円を納付する。
「登記の事由 清算結了
登記すべき事項 平成○年○月○日 清算結了」
- (注) 登記された支店がある場合は、その所在地においても、清算結了の登記を行う。
(2) 破産による登記記録の閉鎖
会社が破産した場合は、裁判所書記官と登記官が連携して、職権で必要な登記を行う。
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① 破産手続開始の登記
法人である債務者について破産手続開始の決定があったときは、裁判所書記官は、職権で、遅滞なく、破産手続開始の登記を当該破産者の本店又は主たる事務所の所在地を管轄する登記所に嘱託しなければならない(破産法 257条1項)。 -
② 破産手続終結等の登記
上記①(破産法257条1項)の規定は、同項の破産者につき、破産手続開始の決定の取消し若しくは破産手続廃止の決定が確定した場合又は破産手続終結の決定があった場合について準用する(破産法257条7項)。 -
③ 支店所在地における破産手続終結等の登記
破産手続終結決定又は破産手続の同時廃止若しくは異時廃止の登記をした本店所在地の登記官は、その旨を支店の所在地の登記所に通知し、通知を受けた支店の所在地の登記所は、当該会社の登記記録を閉鎖する[4]。
[1] 商業登記規則72条1項参照
[2] 会社法477条の中から、清算株式会社の清算人、清算人会、監査役、監査役会等の機関設計を選択する。
[3] 清算株式会社の会社の機関(会社法477条による清算人、監査役等)に関する登記事項があれば、併せて登記する。
[4] 平成18年8月25日 民商1999号通知