SH1107 ブラジルの業務委託及び労働者派遣に関する改正について 古梶順也(2017/04/12)

そのほか労働法

ブラジルの業務委託及び労働者派遣に関する改正について

西村あさひ法律事務所

弁護士 古 梶 順 也

 

1 はじめに

 2017年3月31日、ブラジルにおいて、1998年の法案提出以来議論されてきた(ⅰ)業務委託[1]に関する規制及び(ⅱ)労働者派遣に関する規制の変更について定める改正法(法律2017年第13429号。以下「本改正法」という。)[2]が成立し、発効した。

 本改正法は、業務委託に関して従来許容されていなかった中核的事業に関する業務委託を認める点や労働者派遣に関して同一の派遣労働者を臨時雇用できる期間を延長する点等、日本企業の労務コスト削減につながりうる内容を含んでいることから、本稿においてその概要を紹介する。

 

2 業務委託

⑴ 従前の規制

 ブラジルにおいては、従前、業務委託について一般的に規律する法律はなく、労働最高裁判所判例第331号によって規律されていた。

 当該労働最高裁判所判例においては、業務委託は、(ⅰ) 委託の対象となる業務が委託元企業の中核的事業に関連するものではないこと、(ⅱ) 委託の対象となる業務が委託元企業と独立して運営されること、という2つの要件を充たす場合にのみ許容されていた。かかる要件を充たさない場合には、委託元企業と委託先企業の従業員との間に雇用関係が存在するものとみなされ、委託元企業は、委託先企業と連帯して当該委託先企業の従業員に対する労働法上の義務について責任を負うとされていた。

 このように、従前は、業務委託は中核的事業に関連しないもの(非中核的事業)についてのみ認められていた。もっとも、かかる中核的事業、非中核的事業の概念は明確ではなく、業務委託の対象となる業務が非中核的事業に該当するかどうかについて多くの訴訟において争われていた[3]

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