ブラジルの倒産手続について(1)
西村あさひ法律事務所
弁護士 後 藤 泰 樹
弁護士 古 梶 順 也
1 はじめに[1]
ご存じのとおりブラジルでは一昨年、昨年と歴史的不況に見舞われ、負債額が史上最大となった昨年6月の通信事業最大手Oiの再生手続申立てを筆頭に、数多くの倒産手続の申立てがなされている。その後、ジウマ・ルセフ前大統領の弾劾による罷免を受けて、昨年8月に新たに大統領に就任したミシェル・テメル新大統領が打ち出した経済成長政策に対する期待感から、レアル相場、ブラジル株相場は回復基調にはあったが、テメル大統領にまつわる汚職問題を受けて相場は一時急落し、また、それまでの不況による爪痕は深く、取引先のブラジル企業による倒産手続申立てを経験したり、あるいは、ブラジル事業からの撤退にあたり現地法人の倒産手続申立てを検討する日本企業も少なくないと思われる。
本稿では、上記の状況を踏まえて、ブラジルにおける一般的な倒産手続の概要を説明する。
2 倒産手続の種類
ブラジルでは、企業(公的企業、金融機関等の一部の企業を除く。)や個人事業主の倒産手続を規定する法律として、2005年に全面的に改訂された倒産法(2005年法律第11101号。以下、「倒産法」という。)があり、同法のもと、清算型の手続として①破産手続(Falência)、再建型の手続として②裁判上の再生手続(Recuperação Judicial)と③裁判外の再生手続(Recuperação Extrajudicial)の計3種の倒産手続が規定されている。このうち、実務的に最も利用されているのが裁判上の再生手続で、債務者としては事業の存続を前提とする裁判上の再生手続を好み、破産手続の要件を充たす可能性が高い場合であっても、まずは破産手続ではなく、裁判上の再生手続を申し立てる場合も多くあるようである。裁判外の再生手続は、破産手続や裁判上の再生手続と異なり、原則として債権者に対する停止効(下記3.(2)A.参照)を有しないこともあって利用件数は非常に少ないが、近年Odebrecht Oil and GasやColomboといった大企業が裁判外の再生手続を利用するなど利用例が少しずつ増えてきている。
3 破産手続
ブラジル倒産法における破産手続は、日本における破産手続と同様、裁判所により選任された管財人が資産を換価し、債権者に配当する手続である。
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