◇SH1124◇ベトナム:国外のインターネットサービス事業者の提供するオンライン情報の規制に関する新通達 カオ・ミン・ティ(2017/04/21)

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ベトナム:国外のインターネットサービス事業者の提供する
オンライン情報の規制に関する新通達

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 カオ・ミン・ティ

 

 インターネットはベトナムにおいても不可欠な社会インフラとなっており、2016年のインターネット人口は4,900万人を超え、総人口に対する普及率は52%に達したとされている。インターネットサービスを提供するために必要な許認可、オンライン情報に関する規制、インターネットの利用に関する禁止行為など、インターネットサービスとオンライン情報の管理・提供・利用に関しては、2013年7月15日付政令第72/2013/ND-CP号(以下「政令72号」)が多岐に渡る規定を置いている。

 政令72号は、ベトナム国内及び国外の事業者及び個人でインターネットサービスとオンライン情報の管理・提供・利用等に直接関与する者を適用範囲と規定し、加えて、ベトナム国内からアクセスできる公開情報を国外から提供する国外の事業者や個人は、ベトナムの関係法令を遵守する義務がある旨を規定している。これらの規定を文字通りに読むと、ベトナムからアクセス可能なウェブサイトやオンラインアプリケーションを運営する国外の事業者についても、およそ政令72号が適用され、オンライン情報に関するベトナムの規制を遵守しなければならず、ベトナムの関係当局からの削除請求等にも応じなければならないように思える。もっとも、国外の公開情報提供者のベトナムの関係法令遵守義務についての細則は情報通信省が別途定める旨が政令72号では規定されており、同細則により政令72号の国外事業者への適用範囲が明らかになるかが注目されていた。

 このたび政令72号の細則として定められたのが、2017年2月15日から施行されている2016年12月26日付情報通信省通達38/2016/TT-BTTTT(以下「通達38号」)である。通達38号が適用対象とするのは、ウェブサイト、ソーシャルネットワーキングサービス、オンラインアプリケーション、検索サービスその他のオンラインサービスにより、ベトナム国内からアクセスできる公開情報を国外から提供する国外の事業者や個人(以下「クロスボーダーオンライン情報提供者」)である。通達38号は、クロスボーダーオンライン情報提供者はベトナム法令を遵守しなければならないと規定した上で、特に、ベトナム国内から月間100万アクセス以上の公開情報を提供するか、ベトナム国内にサービス提供のためのサーバーを設置するクロスボーダーオンライン情報提供者に対し、以下の義務を規定する。

  1. ⅰ 名称、設立国、本店所在地、サーバー所在地、ベトナム国外及び国内のコンタクト先等を情報通信省に届け出なければならない(Eメールでの届出可)。
     
  2. ⅱ 政令72号第5条では、国家の安全保障・社会安全秩序を脅かすこと、国家に反抗すること、伝統的価値観を破壊すること、人種・宗教的対立を引き起こすこと、暴力を誘発すること、私人の尊厳・名誉を害すること、わいせつ物を頒布することなどを目的にオンライン情報を提供すること等が禁止されている。

    上記の禁止事項に該当するコンテンツ(以下「禁止コンテンツ」)がクロスボーダーオンライン情報提供者により提供された場合、禁止コンテンツを排除するためにクロスボーダーオンライン情報提供者は情報通信省に必要な協力をしなければならない。具体的には、情報通信省は、禁止コンテンツであると判断する場合、まずはクロスボーダーオンライン情報提供者に禁止コンテンツの削除要求を行う。クロスボーダーオンライン情報提供者がその要求の受領から24時間以内に返答せずかつ削除しなかった場合、情報通信省は2回目の削除要求を行う。この2回目の削除要求の受領からさらに24時間以内にクロスボーダーオンライン情報提供者による返答がなくかつ削除がされない場合、関係当局はベトナムの禁止コンテンツの拡散を防ぐために必要な技術的対策を実施する。他方で、禁止コンテンツにより国益への脅威があると判断される場合、関係当局はベトナムのユーザーへの禁止コンテンツの拡散を防ぐために必要な技術的対策を直ちに実施し、同時にクロスボーダーオンライン情報提供者に禁止コンテンツの削除要求を行う。関係当局による技術的対策は、クロスボーダーオンライン情報提供者により禁止コンテンツの削除が行われた場合には解除される。

 以上から、少なくともベトナム国内から月間100万アクセス以上あるか、ベトナムにサーバーを有するクロスボーダーオンライン情報提供者に対しては、政令72号その他のベトナムの関係法令が明確に適用され、禁止コンテンツが掲載されている場合は、当局による削除要求及び技術的対策が行われる可能性が明らかになったといえる。今後、通達38号がどのように運用されるかに注目したい。

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