ブラジル商標制度の概要(1)
西村あさひ法律事務所
弁理士 谷 口 登
1 はじめに
ブラジルGDP成長率は、2015年は、-3.8%、2016年は、-3.6%と2年連続でマイナス成長を記録しているとはいえ、依然として中南米の経済規模の国であり、市場的に魅力のある国であることには変わりはない。
一方、2016年12月に世界税関機構(WCO)から公表された情報によると、2015年にブラジルにて摘発された模倣品等の数量は、世界第6位と多い。知的財産権のうち、模倣品対策上、特に重要となってくるのは、商標権と著作権である。本稿では、ブラジル商標制度のうち、まずは、出願・登録の状況、登録の対象並びに出願から登録までの手続を俯瞰したい。
2 ブラジル商標出願・登録の状況
ブラジルへの商標出願の件数は、INPI及びWIPOの情報によると、2014年は157016件、2015年は158709件、2016年は166368件と1年間に15万件以上の商標出願がされている。登録件数は、2014年は85738件、2015年は116050件となっている。
ブラジルは、商標出願の審査遅延、未処理案件の数が多いことが問題となっているが、2014年から未処理案件数は減少傾向にある。これは、査定、審決の件数は2014年は157600件、2015年は189916件、2016年は195896件と、出願件数以上の案件につき、査定等がされていることからも伺える。
とはいえ、現在、出願から最初の査定までは、異議申立がない場合であっても3年以上、異議申立があった場合は、査定までに5-6年程度かかっている案件があり、依然として審査期間は長い。これは、2015年10月の時点で審査を開始していない案件が471565件、2016年10月の時点では428889件と膨大な未処理案件があるためである。審査遅延の問題が解消するまでには、もう少し時間がかかりそうである。2016年12月時点の情報によると、2014年5月までに出願され異議申立がなかった案件と2011年7月までに出願され異議申立がされた案件について集中的に審査を行い査定をしているようである。
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