◇SH1263◇インドネシア:不動産登記情報の電子化の動き 福井信雄(2017/06/30)

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インドネシア:不動産登記情報の電子化の動き

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 福 井 信 雄

 

 インドネシアでは近年、ジャカルタ州を中心にコンドミニアム、オフィスビル、ショッピングモール等の不動産開発が活発に行われている。不動産開発事業に対しては外資規制が無いことから日本企業を含む外国投資家の参入も多く、土地を保有する現地パートナーとの合弁の形態で不動産開発会社(SPC)をインドネシアに設立し事業を行うケースが一般的である。

 そのような不動産開発事業を実施する場合に最初に問題になるのが開発用地の権利関係の確認である。不動産デューディリジェンス(不動産DD)と呼ばれるもので、不動産取引を行う前に売主が間違いなくその土地の権利者であることを確認する作業である。日本の不動産取引実務では、まずは一般に公開されている不動産登記簿謄本を法務局で取得し、登記上の権利者を確認することができるが、インドネシアでは現状土地の登記が一般に開示されていないため権利者の確認作業も容易ではない。現在の実務で一般的に行われているのは、まず土地の権利者が保有している土地の権利証書の写しの開示を受けて権利関係を確認し、同時に権利者から委任状の交付を受けて管轄の土地管理局を訪問し、そこで保管されている権利証書と照合することで、権利関係の確認を行うことになる。日本で即時に登記内容が確認できるのに比べると、使い勝手の悪い制度である。さらに、全ての土地に権利証書が発行されているわけではないという点も権利関係の確認を困難にしている要因である。

 そのような状況のなか、インドネシアの農業国土計画省と国土庁は、2017年4月に土地情報を一般に提供するための電子システムを導入する旨の規則(以下、「電子土地情報サービス規則」という。)を制定した。電子土地情報サービス規則によれば、電子システムを通してアクセスできる情報は土地の権利証書に記載されている情報を含む対象土地に関連する情報であるが、当該情報へのアクセスを申請できるのは、①土地の権利者、②土地の権利証書作成担当官、③公証人、④土地の競売機関、⑤土地台帳サービスオフィス、⑥銀行、⑦その他当局が定める者とされている。土地の購入を検討する投資家自ら申請することはできないものの、インドネシアの公証人を選任することにより公証人を通して土地情報を入手することができると解され、その場合には、現在の実務に比べて土地の権利証書上の情報の入手は随分容易になることが期待できる。

 しかしながら、電子土地情報サービス規則自体は施行されたものの、実際に電子システム上に土地の情報がアップロードされているものは現時点では無く、したがって実際の運用開始には至っていないのが現状である。土地の権利証書自体が発行されていない土地も少なくない状況で、今後全ての土地の情報を電子化していくのにはまだ時間がかかることが予想される。他方で、インドネシアの投資調整庁が所管する外国資本企業の許認可関係の申請等は数年で全てオンライン化されたという実績もあることから、土地情報の電子化についてもインドネシア政府の迅速な対応を期待したいところである。

 

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