◇SH1295◇ベトナム:投資ライセンス手続に関する新しい通達(1) 中川幹久(2017/07/20)

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投資ライセンス手続に関する新しい通達(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 中 川 幹 久

 

 外国投資家がベトナムに投資する場合の投資ライセンス手続に関して、外国投資家の手続的な負担を軽減することを目的とした新たな手続について定めた通達(通達第02/2017/TT-BKHDT号。以下「通達02号」)が2017年4月18日付けで成立し、同年6月15日に施行された。本稿では、通達02号の概要をご紹介したい。

 

1. 通達02号制定の背景と全体像

 旧投資法上、外国投資家がベトナムにおいて投資をする場合、投資証明書(いわゆるIC)を取得することが要求され、この投資証明書の取得により外国投資家による投資が承認されると同時に現地法人も設立され、その意味で投資証明書は企業登記としての機能も有していた。ところが、2015年7月1日に施行された現在の投資法においては、以下で詳述するとおり、外国投資家がベトナムにおいて投資をする場合は、外国投資家による投資を承認する投資登録証(いわゆるIRC)を取得した上で、現地法人を設立するための企業登記としての性質を有する事業登録証(いわゆるERC)を取得することを要し、二段階の手続を求められる結果となった。かかる二段階の手続は、管轄当局が異なる上、提出を求められる書類にも重複があるなど、外国投資家からみると、旧投資法の下での手続に比べ、手続的負担が増えたとの批判がなされてきた。こうした批判を受け、ベトナム政府は2015年11月12日付けで成立した政令118/2015/ND-CP号(以下「政令118号」)の中で、外国投資家は、投資登録証の申請を取り扱う当局を窓口として、投資登録証と事業登録証の両登録証の取得申請手続きをまとめて行うことができることを定め、その具体的な手続は別途定めることとしていた。通達02号は、かかる具体的な手続を定めた政令118号の施行細則という位置づけになる。

 通達02号では、大別して以下の3つの場面に分け、それぞれの場面において、投資家側及び管轄当局側が採るべき手続の詳細を規定している。

  1. ① 外国投資家、及び、外国投資家が投資するベトナム国内企業のうち所定の条件に該当する企業(以下、総称して「外国投資家」)が、ベトナムにおいて投資プロジェクトを立ち上げる(会社を新規に設立する)場面
  2. ② 外国投資家が、既存のベトナム企業の持分を取得する場面
  3. ③ 投資登録証及び企業登録証の両方の変更を要する事象が発生する場面

 以下では、まず①(新規設立)の場面における手続を概説する。

 

2. 新規設立の場面における手続

 外国投資家がベトナムにおいて会社を新規に設立するなどの形態で投資プロジェクトを立ち上げる場合、上述のとおり、外国投資家は、投資登録証を取得した上で、事業登録証を取得し、かかる事業登録証の取得によって会社が設立される。この場合、投資登録証の取得申請を管轄する当局(以下「投資登録当局」)と、事業登録証の取得申請当局(以下「事業登録当局」)は異なる。すなわち、会社の本店所在地が工業団地内にある場合には、投資登録当局は工業団地管理委員会となる一方で、事業登録当局は、当該地域を管轄する計画投資局となる。通常、工業団地管理委員会は工業団地内に事務所がある一方、計画投資局は工業団地内にはなく、相応に離れた地にあることも珍しくない。従前、ベトナムの工業団地は、投資誘致の際の説明の一つとして、投資ライセンス取得がワンストップサービスによって行われ容易であることを挙げていたが、現在の投資法の施行により、かかるワンストップサービスは実現できない状態となっている。他方、会社の本店所在地が工業団地外の場合、両登録証の取得申請手続きの管轄当局は当該地域を管轄する計画投資局となるが、同じ計画投資局の中の別の部局が担当する。そのため、やはり両登録証の取得申請手続は分断されている。両登録証の取得申請書類には共通するものも複数あるが、それらは二度提出を求められ、手続上、徒に外国投資家の負担を増大させていると批判されている。

 通達02号では、こうした負担の軽減を目指し、外国投資家は、その希望に従い、両登録証の取得申請手続きを一つの当局を相手として一つの手続で行うか、従前どおり二つの手続として行うかを選択することができることとされている。外国投資家が一つの手続で行うことを選択した場合、投資登録当局が窓口になり、外国投資家は、当該当局に対して投資登録証の取得申請書類に加え、事業登録証の取得申請書類もまとめて提出する。その際、共通して提出することを要する書類については一通のみ提出すれば良い。この場合、投資登録当局は、事業登録当局と、当局内の連携システムを通じて情報を共有し申請手続きを進めることとされ、両方の当局による審査がともに完了したことを受けて、投資登録証と事業登録証の両方が一度に発行される。また、書類に不備等がある場合には、両手続にかかる不備等が一度にまとめて通知されることが想定されている。

(2)に続く

 

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