チリの知的財産権制度の基礎
西村あさひ法律事務所
弁理士 塩 谷 信
1 はじめに
ブラジルやアルゼンチンでは経済の停滞が続く中、チリの経済は比較的堅調に推移している。チリは多数の国々と自由貿易協定(FTA)を積極的に締結しており、他の中南米諸国に比べて輸出入が盛んである。また、チリには、4つのフリーゾーン(自由貿易地区)があり、商品の関税が免除されるため、活発な商品の流通の中で、多数の模倣品・海賊版も輸入され、販売されている。模倣品・海賊版を排除するためには、基本的には、特許や商標等の知的財産権の取得が必要となるため、本稿ではチリの知的財産権制度を概観する。
2 特許及び実用新案
特許権の存続期間は、出願日から20年であり更新はできない。そして、特許の登録要件としては、新規性、進歩性、産業上の利用可能性が求められている。発見、数学的方式、植物又は動物の品種、金融・商業システム、外科あるいは治療又は診察方法等は、特許の対象とはなっていない。
特許出願の方式審査が終了した後に出願公告され、第三者は異議申立が可能となる。そして、異議期間経過後に実体審査が行われる。審査請求制度はなく、また、優先審査や早期審査制度もない。
特許無効審判制度は設けられていないが、特許の無効を求める者は登録から5年以内に裁判所に対して無効訴訟を提起することが可能である。
実用新案権の存続期間は、出願日から10年であり更新することはできない。実用新案の対象は、機械・器具・機器に関する全部又は一部あるいは組み合わせに関する考案である。そして、登録要件として、新規性、産業上利用性が求められている。
実用新案の審査については、概ね特許と同じであり、実用新案登録の無効は、登録から5年以内に裁判所に無効訴訟を提訴しなければならない。
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