◇SH1483◇ベトナム:ベトナム国際仲裁センター(VIAC)の新仲裁規則(1) 青木 大(2017/11/08)

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ベトナム国際仲裁センター(VIAC)の新仲裁規則(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 青 木   大

 

 ベトナム国際仲裁センター(VIAC)の新仲裁規則が2017年3月1日より施行されている。以下、VIAC新仲裁規則(以下「規則」)の主要な規定を、全2回にわたって紹介する。

 

1. 仲裁手続の開始

 VIAC仲裁規則における仲裁は、仲裁申立書(Request for Arbitration)をVIACに対して提出することで開始される(規則7条、5条)。VIACは仲裁申立書を受領してから10日以内に、被申立人に対して仲裁申立書その他の書面を回付しなければならない(規則8条)。

 

2. 答弁書(Statement of Defence)

 被申立人は、仲裁申立書受領後、原則として30日以内に、答弁書をVIACに対して提出しなければならない(規則9条1項)。なお、被申立人が仲裁廷の管轄を争う場合には、答弁書において主張を行わなければ異議を申し立てる権利を失うことになるため注意が必要である。答弁書提出期限は期限前に書面で延長申請を行うことで延長が可能であるが、仲裁人の選定は上記30日以内に自ら行うかVIACに選任を請求しなければならず、期限の延長は認められていない(規則9条2項)。

 

3. 反対請求(Counterclaim)

 被申立人は反対請求を答弁書の提出と同時に提起することができる(ただし、当該反対請求は同一の仲裁合意に服する請求である必要がある。)。

 反対請求申立書は答弁書とは別の書面とする必要がある(規則10条1項)。VIACは反対請求申立書受領後10日以内に申立人に対してこれを回付しなければならず、申立人は反対請求申立書受領後30日以内に反対請求に対する答弁書をVIACに提出しなければならない(規則10条)。

 

4. 仲裁人の数

 仲裁人の数は1名又は3名とされ、当事者間で仲裁人の数を1名と合意していない限り、仲裁人の数は3名とされる(規則11条)。

 

5. 仲裁人の選任

 仲裁人3名の場合、まず申立人は仲裁申立書において1名の仲裁人を指名するか、VIACに選任を請求しなければならない。被申立人は同様に答弁書において1名の仲裁人の指名かVIACへの選任の請求を行わなければならない。VIACが仲裁人選任の請求を受けた場合、VIACは7日以内に仲裁人選任の決定を行う。2人目の仲裁人の選定後15日以内に2名の仲裁人が3番目の仲裁人(仲裁廷の長)について合意できない場合には、仲裁人らはその旨をVIACに通知し、VIACは通知を受領後7日以内に3番目の仲裁人の決定を行う(規則12条)。

 仲裁人が1名の場合、被申立人が仲裁申立書を受領後30日以内に仲裁人について合意できなければ、VIACがその後7日以内に仲裁人の決定を行う(規則13条)。

 

6. 請求の撤回、変更

 当事者は仲裁廷が仲裁判断を行うまで、その請求を撤回する権利を有する。また、仲裁廷が仲裁判断を行うことを困難にし、又は仲裁判断を遅らせることを目的とした濫用であると認めない限り、当事者は、最終のヒアリングが終了するまでに、自らの主張を修正、補強することができる(規則14条)。

(第2回に続く)

 

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