イタリアのデータ保護当局がChat GPTをめぐりOpen AIに対してイタリアユーザーのデータ処理の制限命令を発令した事例と各国の規制状況
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士・カリフォルニア州弁護士 井 上 乾 介
弁護士 伊 藤 雄 太
1 はじめに
2023年3月30日、イタリアのデータ保護当局[1]は、アメリカの人工知能開発会社であるOpen AI, L.L.C.[2]が開発した対話型AI「Chat GPT」について、イタリアのユーザーのデータ処理の違反があるとして、即時の一時利用停止措置を課した[3]。
Chat GPTは、その高い性能により、近年、全世界で爆発的に利用が増えている一方で、個人データ保護をはじめとする問題点も指摘されてきた。イタリアでの当該措置を受け、欧州連合(EU)各国やカナダなどで規制の検討がなされている。
本稿では、イタリアにおける規制の概要、Open AIをめぐる国外の状況と日本における状況を紹介する。
2 本件措置
⑴ 本件措置の概要
2023年3月30日付のGPDPのプレスリリースによれば、本件措置は、一般データ保護規則GDPRとイタリアのデータ保護法に基づくものとしており、本件措置の命令に当たっては、主に以下の点を考慮したとしている[4]。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(いとう・ゆうた)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2017年東京大学法学部卒業。2019年東京大学法科大学院卒業。2020年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
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アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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