SH4402 「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための 実務参照資料」の公表 横井傑(2023/04/11)

組織法務サステナビリティ

「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための
実務参照資料」の公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所

弁護士 横 井   傑

 

1 実務参照資料の公表

 2023年4月4日、経済産業省は、これからビジネスと人権分野の取組を進める企業に向けて、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料」[1](以下「実務参照資料」という。)を公表した。2022年9月13日に公表された「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」[2](以下「人権尊重ガイドライン」という。)の1.1項末尾では、経済産業省が各企業のなすべき人権尊重の取組を具体的・実践的に示す資料を作成すると予告していたが、実務参照資料がまさにこの資料にあたる。

 

2 実務参照資料の位置づけと概要

(1)全体像

 実務参照資料は、ビジネスと人権分野を網羅的に対象とする資料ではなく、これから本格的に人権尊重の取組を進めていく企業に向けて、企業が最初に行うこととなる①人権方針の策定の検討ポイントと②人権デュー・ディリジェンス(以下「人権DD」という。)の最初のステップで行う人権侵害リスクの特定・評価の実施フローの参考例を示した資料である。

本文

①    人権方針の策定の検討ポイント

②    人権への負の影響(人権侵害リスク)の特定・評価の実施フロー

別添1

人権侵害リスクの特定・評価(②)のための補助ツールとして、事業分野別の人権課題、産品別人権課題、地域別人権課題、人権侵害リスクの例を示した資料

別添2

人権侵害リスクの特定・評価(②)のための作業シート

 人権尊重ガイドラインは、企業のなすべき人権尊重の取組として、(i)人権方針の策定、(ii)人権DDの実施、(iii)救済の3項目を挙げているが(人権尊重ガイドライン2.2項)、実務参照資料は、この全体プロセスのうち冒頭部のみを対象としている点に注意が必要である。この点は、実務参照資料の図表1が明快で分かりやすい。

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図1:人権尊重の取組の全体像および本資料のカバー範囲

出典:実務参照資料 図表1

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(よこい・すぐる)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業パートナー。2005年慶大法学部卒業。2009年早大ロー修了。2010年弁護士登録(第二東京弁護士会)。2020年Georgetown Law(LL.M)修了。元AMT北京オフィス・上海オフィス代表。2021年より香港提携事務所Nakamura & Associates外国法登録弁護士。主な取扱分野は、中国・香港法務、経済安全保障・通商法務等。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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