内閣府、「メタバース上のコンテンツ等をめぐる新たな法的課題等に関する論点の整理(案)」にかかる意見募集について
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業
弁護士 中 崎 尚
1 はじめに
コンテンツ等をめぐってメタバース等がもたらす新たな法的課題に関して、2022年6月に決定された政府の「知的財産推進計画2022」において、ソフトローによる対応を含め必要なルール整備について検討する方針が打ち出された。これを受けて、2022年11月に「官民連携会議」が設置され(筆者も構成員として参加している)、以下の項目を主要な検討課題として議論が行われその成果が、2023年4月末に論点整理(案)[1](以下「整理案」という。)としてまとめられ、2023年5月17日までパブリックコメントの募集がなされた[2]。本稿では、下記項目のうち、ビジネスに大きく影響する、あるいはビジネス側の対応の必要性が高い事項を中心に紹介していく。これらの論点については、拙著『Q&Aで学ぶメタバース・XRビジネスのリスクと対応策』(商事法務、2023)においても、詳細に検討しているので、参照されたい。なお、ここでいうメタバースは、産業利用等にかかる領域のものは含まず、ソ-シャルVR系、ゲーム系、コンテンツIP系、コマース系統のメタバースを指すこと、アバターについては参加者が持ち込むタイプであることが前提とされている点は要注意である。
現実空間と仮想空間を交錯する知財利用、仮想オブジェクトのデザイン等に関する権利の取扱い | 現実空間のデザインの仮想空間における模倣 |
現実空間と仮想空間を横断した実用品デザインの活用 | |
現実空間の標識の仮想空間における無断使用 | |
メタバース上の著作物利用等に係る権利処理 | メタバース上のイベント等における著作物のライセンス利用 |
仮想空間におけるユーザーの創作活動 | |
NFT等を活用した仮想オブジェクトの取引制度・取扱い等の現状 | |
メタバース外の人物の肖像の無断使用への対応 | 実在の人物の肖像の写り込み |
実在する他者の肖像を模したアバター等の無断作成・無断使用 | |
他者のアバターの肖像等の無断使用その他の権利侵害への対応 | 他者のアバターの肖像・デザインの無断使用 |
他者のアバターへのなりすまし、他者のアバターののっとり等 | |
アバターに対する誹謗中傷等 | |
アバターの実演に関する取扱い | アバターの実演に係る著作隣接権の権利処理 |
仮想オブジェクトやアバターに対する行為、アバター間の行為をめぐるルールの形成、規制措置等の取扱い | メタバース上の問題事案の現状整理と対応の方向性の検討 |
国際裁判管轄・準拠法 | 対応の方向性の検討 |
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(なかざき・たかし)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。
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