Legal as a Service (リーガルリスクマネジメント実装の教科書)
第2回 変える、「法務=コストセンター」説(2/2)
Airbnb Japan株式会社
渡 部 友一郎
合同会社ひがしの里・セガサミーホールディングス株式会社
東 郷 伸 宏
©弁護士・グラフィックレコーダー 田中暖子 2023 [URL]
第1講 変える、「法務=コストセンター」説(2/2)
5 共通の悩みの対応
(1)前回の振り返り
前回は、「法務=コストセンター」という社内や依頼者の空気感を共通の悩みとして取り上げました。私たちは、努力不足であるという批判が必ずしも妥当でないこと、コストセンター批判により生じうる職務満足感低下という弊害等を一緒に分析しました。
今回は、「法務=コストセンター」に対する対応を考えます。
結論を先取りすれば、法務機能が「事業の創造にどれほど貢献しているか」(貢献していると評価をもらっているか)という視点から対応を考えるべきです。具体的には、①経済産業省「法務機能在り方研究会報告書」の記述を個人及び法務部門で再訪してみること、そして、②リーガルリスクマネジメントの枠組みを仕事に取り入れるという方法が解決の鍵になることです。今回は①について取り上げていきます。
(2)法務機能在り方研究会報告書の再訪
はじめに、経済産業省「法務機能在り方研究会報告書」は、下記のとおり、2つ存在します。
2018年版報告書の歴史的意義は、「これからの日本企業に求められる法務機能」として、「守り(ガーディアン機能)」及び「攻め(パートナー機能)」を示したことです。
とりわけ、日本企業の法務部門が、歴史的に「守り(ガーディアン機能)」において大きな貢献をしてきた一方で、「攻め(パートナー機能)」の部分が十分でないことを指摘した点で、法務部門に新しい指針を示したと言えます。
2018年版報告書には、5年経過した現在でも、私たち法務部門には(耳の痛い可能性もある)さまざまな実直な指摘が記載されています。たとえば、法務部門に対するネガティブな声です。これは前回の記事の対談で東郷さんから指摘があった「顧客満足度調査」を実施していない場合には、同じことが社内で言われていないか、勇気を持って見るべきお客様の声と言えます。
ネガティブな意見
出典:2018年版報告書12頁 |
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(わたなべ・ゆういちろう)
鳥取県鳥取市出身。2008年東京大学法科大学院修了。2009年弁護士登録。現在、米国サンフランシスコに本社を有するAirbnb(エアビーアンドビー)のLead Counsel、日本法務本部長。米国トムソン・ロイター・グループが主催する「ALB Japan Law Award」にて、2018年から2022年まで、5年連続受賞。デジタル臨時行政調査会作業部会「法制事務のデジタル化検討チーム」構成員、経済産業省「国際競争力強化に向けた日本企業の法務機能の在り方研究会」法務機能強化実装WG委員など。著書に『攻めの法務 成長を叶える リーガルリスクマネジメントの教科書』(日本加除出版、2023)など。
(とうごう・のぶひろ)
金融ベンチャー役員を経て、2006年サミー株式会社に入社。以降、総合エンタテインメント企業であるセガサミーグループの法務部門を歴任。上場持株会社、ゲームソフトウェアメーカー、パチンコ・パチスロメーカーのほか、2012年にはフェニックス・シーガイア・リゾート(宮崎県)に赴任。部門の立ち上げから、数十名規模の組織まで、多種多様な法務部門をマネジメント後、2022年には組織と個人の競争力強化を目的とする合同会社ひがしの里を設立。2023年からはセガサミーグループにおける内部監査部門を担当。