インド:競争法改正法案(Competition (Amendment) Act, 2022)(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 山 本 匡
弁護士 小 川 聖 史
(承前)
2 支配権(control)の定義の変更
現在のインド競争法の規定では、支配権(control)は以下の通り規定されている。
「(a) “control” includes controlling the affairs or management by—
(i) one or more enterprises, either jointly or singly, over another enterprise or group;
(ii) one or more groups, either jointly or singly, over another group or enterprise」
改正法案では以下の通り規定されている(下線部が現在の規定と異なる部分で筆者が付したもの)。
「(a) “control” means the ability to exercise material influence, in any manner whatsoever, over the management or affairs or strategic commercial decisions by—
(i) one or more enterprises, either jointly or singly, over another enterprise or group; or
(ii) one or more groups, either jointly or singly, over another group or enterprise」
もっとも、現状の実務においても、インド競争委員会が支配権の有無を判断するに当たっては「重大な影響」(material influence)の有無を考慮しており、改正法案はこの実務を法文に反映させようとするものといえる。また、競争者間の企業結合であれば、インド競争法上は「control」の取得がないようなマイノリティの議決権株式取得のみでも届出対象取引に該当するとされてしまうことから、この定義の変更の影響はさほど大きなものではないと思われる。
3 審査・待機期間の短縮
現在、企業結合の届出が行われた場合、インド競争委員会は30営業日以内に当該企業結合が競争に対する重大な悪影響を及ぼす可能性があるかの初期的(prima facie)な判断を行い、210日以内に企業結合を承認するかの判断を行うことになっている(210日以内にインド競争委員会が必要な命令を行わなければ承認されたものとみなされる。)。
この記事はプレミアム向けの有料記事です
ログインしてご覧ください
(やまもと・ただし)
2003年弁護士登録。2009年から2017年にかけて、インド・シンガポールで勤務。2015年からヤンゴンにて随時執務。新興国を中心に海外進出、各種リーガル・サポートに携わっている。
(おがわ・さとし)
長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2008年一橋大学法科大学院修了、2009年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2015年University College London修了(LL.M. in Competition Law)、2015年~2017年経済協力開発機構(OECD)金融企業局競争課勤務。2018年~2019年経済産業省・公正取引委員会・総務省「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」委員。主な取扱分野は独占禁止法・競争法であり、特に、国内外競争当局との折衝や、海外競争法対応、デジタル分野に関する独禁法上の問題など先端的な競争法関連案件を中心としてアドバイスを提供している。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。
当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。
詳しくは、こちらをご覧ください。