SH4204 インド:競争法改正法案(Competition (Amendment) Act, 2022)(2) 山本匡/小川聖史(2022/11/17)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

インド:競争法改正法案(Competition (Amendment) Act, 2022)(2)

 

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 山 本   匡

弁護士 小 川 聖 史

(承前)

2 支配権(control)の定義の変更

 

現在のインド競争法の規定では、支配権(control)は以下の通り規定されている。

「(a)   “control” includes controlling the affairs or management by—

(i)   one or more enterprises, either jointly or singly, over another enterprise or group;

(ii)  one or more groups, either jointly or singly, over another group or enterprise」

 

 改正法案では以下の通り規定されている(下線部が現在の規定と異なる部分で筆者が付したもの)。

「(a)   “control” means the ability to exercise material influence, in any manner whatsoever, over the management or affairs or strategic commercial decisions by—

(i)   one or more enterprises, either jointly or singly, over another enterprise or group; or

(ii)  one or more groups, either jointly or singly, over another group or enterprise」

 

 もっとも、現状の実務においても、インド競争委員会が支配権の有無を判断するに当たっては「重大な影響」(material influence)の有無を考慮しており、改正法案はこの実務を法文に反映させようとするものといえる。また、競争者間の企業結合であれば、インド競争法上は「control」の取得がないようなマイノリティの議決権株式取得のみでも届出対象取引に該当するとされてしまうことから、この定義の変更の影響はさほど大きなものではないと思われる。

 

3 審査・待機期間の短縮

 現在、企業結合の届出が行われた場合、インド競争委員会は30営業日以内に当該企業結合が競争に対する重大な悪影響を及ぼす可能性があるかの初期的(prima facie)な判断を行い、210日以内に企業結合を承認するかの判断を行うことになっている(210日以内にインド競争委員会が必要な命令を行わなければ承認されたものとみなされる。)。

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(やまもと・ただし)

2003年弁護士登録。2009年から2017年にかけて、インド・シンガポールで勤務。2015年からヤンゴンにて随時執務。新興国を中心に海外進出、各種リーガル・サポートに携わっている。

 

(おがわ・さとし)

長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2008年一橋大学法科大学院修了、2009年弁護士登録(第一東京弁護士会)。2015年University College London修了(LL.M. in Competition Law)、2015年~2017年経済協力開発機構(OECD)金融企業局競争課勤務。2018年~2019年経済産業省・公正取引委員会・総務省「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」委員。主な取扱分野は独占禁止法・競争法であり、特に、国内外競争当局との折衝や、海外競争法対応、デジタル分野に関する独禁法上の問題など先端的な競争法関連案件を中心としてアドバイスを提供している。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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