医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律の一部を改正する法律案(閣法38号)、参院本会議で可決、成立
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 後 藤 未 来
弁護士 谷川原 淑 恵
1 はじめに
2023年5月17日、医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報に関する法律(平成29年法律28号。以下「次世代医療基盤法」という。)の一部を改正する法律案(211回国会閣法38号。以下「本改正法案」という。)が参議院本会議にて可決され、成立した[1][2]。なお、本改正法案の内容に伴い、次世代医療基盤法の名称は「医療分野の研究開発に資するための匿名加工医療情報及び仮名加工医療情報に関する法律」に改められ、本改正法案は公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される予定である。
次世代医療基盤法は、個人単位での連結を含め質の高い医療情報の利活用を推進するために、個人の権利利益の保護を確保しつつ、匿名加工された医療情報を安心して適正に利活用することが可能な新たな仕組みとして、個人情報保護法の特例法として制定され、2018年5月11日に施行された。同法は、施行後5年での見直しが規定(附則5条)されていることから、同条に基づき、内閣の「健康・医療データ利活用基盤協議会」のもとに「次世代医療基盤法検討ワーキンググループ」が設置され、見直しの必要性およびその内容が検討されてきた。
本改正法案は、現行の次世代医療基盤法の課題に対処するために、以下の①~③に関する規定の新設等を内容とするものである。
① 仮名加工医療情報の利活用にかかる仕組みの創設 | 現行法による匿名加工医療情報の作成・提供に加え、新たに「仮名加工医療情報」を作成し、 利用に供する仕組みを創設するもの |
② NDB等の公的データベースとの連結 | NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)、介護DBなどの公的データベースと、匿名加工医療情報による連結解析が可能となる法令上の措置を盛り込むもの |
③ 医療情報の利活用推進に関する施策への協力に関する規定の創設 | 医療情報取扱事業者に対し、認定事業者への医療情報の提供等により国の施策への協力に努めることを規定するもの |
以下では、これら各規定の内容について概観する。
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(たにがわら・よしえ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業アソシエイト。2009年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2011年早稲田大学大学院法務研究科修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)。2020年米国University of Pennsylvania Carey Law School (LL.M.) 修了。2021年米国ニューヨーク州弁護士登録。グローバル製薬会社での企業内弁護士経験を有し、ライフサイエンス・ヘルスケア分野の法務を専門として、製薬や医療機器に関する国内及びクロスボーダー取引(M&A、知財ライセンス、業務提携・アライアンス等)、薬機法等の各種規制対応、訴訟・紛争解決を取り扱う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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