タイ:タイ証券取引委員会(SEC)による上場会社の私募による株式発行手続の改正(上)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 今 野 庸 介
1 はじめに
タイ証券取引委員会(以下「SEC」という。)は、投資家保護を十分に確保しつつ、上場会社(タイ証券取引所(以下「SET」ということがある。)に上場している公開会社をいう。以下同じ。)による私募(Private Placement)(以下「私募」という。)による新規株式の募集の効率性を高めるため、上場会社による私募に関する規則の改正を2023年2月2日付で公表した[1]。当該改正規則は2023年7月1日に施行される予定である。今回の改正により上場会社の資金調達が容易にかつ効率的に行われることになり、上場会社に対する投資は活性化されることが期待されるため、重要な改正と評価できる。そのため、本書においてかかる改正規則について概説する。
なお、タイ法上の会社には、民商法の下で設立される非公開会社(Private Limited Companies)と公開会社法(Public Limited Company Act B.E. 2535 (1992))において設立される公開会社(Public Limited Companies)の2種類がある。後者の公開会社は公募が可能な会社形態であり、タイの証券取引所に上場するためには公開会社である必要がある。外国企業がタイで事業を行う場合の最も一般的な進出方法は、非公開会社を現地法人として設立する方法になるが、本書において今回取り上げている改正は、後者の公開会社であって、かつ、その株式がSETに上場している上場会社の私募による株式発行手続に係る規制の改正になる。
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(こんの・ようすけ)
2014年に長島・大野・常松法律事務所に入所。入所以降、ファイナンス案件を中心に国内外の企業法務全般に従事。2020年にミシガン大学ロースクール(LL.M.)修了。2022年8月よりバンコクオフィスに勤務。現在は、在タイ日系企業の一般企業法務等も含め、幅広く企業法務に関与している。
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