EU「サイバーレジリエンス法案」の概要と最新動向
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士 井 上 乾 介
弁護士 福 山 和 貴
1 はじめに
世界的にサイバー攻撃は増加傾向にある。国立研究開発法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。)が運用している大規模サイバー攻撃観測網(NICTER)が2022年に観測したサイバー攻撃関連通信数(約5,226億パケット)は、2015年(約632億パケット)と比較して8.3倍となっているなど、依然多くの攻撃関連通信が観測されている状態である[1]。
出典:「令和5年版情報通信白書」(総務省)[2]135頁
特に、IoT機器を狙った通信は大幅に増加傾向にある。2022年においては、IoT機器を狙った通信が大幅に増加し、サイバー攻撃関連通信全体の3割を占めている[3]。
出典:同上
日本国内では、総務省およびNICTにおいて、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)と連携し、2019年(平成31年)2月から「NOTICE(National Operation Towards IoT Clean Environment)」と呼ばれる取組を実施している。
現行の取組では、①NICTがインターネット上のIoT機器に対して、たとえば「password」や「123456」等の容易に推測されるパスワードを入力することなどにより、サイバー攻撃に悪用される恐れのある機器を特定し、②特定した機器の情報をNICTからISPに通知し、③通知を受けたISPがその機器の利用者を特定し注意喚起を行う、という一連の取組を行っている[4]。NOTICEの実施状況については、下記図を参照されたい。
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(いのうえ・けんすけ)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 スペシャル・カウンセル。2004年一橋大学法学部卒業。2007年慶応義塾大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(東京弁護士会)。2016年カリフォルニア大学バークレー校・ロースクール(LLM)修了。2017年カリフォルニア州弁護士登録。著作権法をはじめとする知的財産法、個人情報保護法をはじめとする各国データ保護法を専門とする。
(ふくやま・かずき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。一橋大学法学部・一橋大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第一東京弁護士会)。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
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