中国における顔認識技術利用に関する安全管理規定の
意見募集案の公表
アンダーソン・毛利・友常法律事務所*
弁護士・ニューヨーク州弁護士 後 藤 未 来
中国弁護士・ニューサウスウェールズ州弁護士 石 瀛
1 はじめに
顔認識システムは、自動化技術を用いて人物の顔を検出して高速に識別・分析するためのシステムであり、スマートフォンのアンロック機能等を始めとした、様々なセキュリティ、認証、治安維持等の分野で活用されている。
中国では、個人情報保護法の下で、個人の顔認識データは人格権につながる機微な個人情報として保護されている[1]。今般、個人の顔認識データに関する新たな措置として、中国の国家インターネット情報弁公室は、2023年8月8日に「顔認識技術利用に関する安全管理規定」(以下「本管理規定」という。)の意見募集案を公表した[2]。
本稿では、本管理規定の内容を概観しつつ、顔認識技術を利用する事業に対して想定され得る影響等について検討する。
2 本管理規定の背景と適用範囲
中国において、個人の顔認識データの保護に関する規制としては、従前から立法、司法、技術規範の観点から少なくとも以下のものが存在する。本管理規定は、新たに行政の観点から、顔認識データの保護を図るものである。
中国における顔認識データの保護に関する規制 | |
立法 | 「個人情報保護法」[3]:2021年11月1日施行 |
司法 | 「最高人民法院 個人情報を処理するための顔認識技術の使用に関連する民事訴訟案件に適用される法律に関する規定」[4]:2021年8月1日施行 |
技術規範 | GB/T 41772-2022「情報技術 生体特徴認識 顔認識システム技術要件」[5]:2023年5月1日施行 |
GB/T 41819-2022「情報セキュリティ技術 顔認識データのセキュリティ要件」[6]:2023年5月1日施行 | |
行政 | 本管理規定:意見募集段階 |
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(ごとう・みき)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー、弁護士・ニューヨーク州弁護士。理学・工学のバックグラウンドを有し、知的財産や各種テクノロジー(IT、データ、エレクトロニクス、ヘルスケア等)、ゲーム等のエンタテインメントに関わる案件を幅広く取り扱っている。ALB Asia Super 50 TMT Lawyers(2021、2022)、Chambers Global(IP分野)ほか選出多数。AIPPIトレードシークレット常設委員会副議長、日本ライセンス協会理事。
(せき・いん)
アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年オーストラリアニューサウスウェールズ大学法学部卒業。2019年ニューサウスウェールズ州事務弁護士登録。2021年中国弁護士登録。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/
<事務所概要>
アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業は、日本における本格的国際法律事務所の草分け的存在からスタートして現在に至る、総合法律事務所である。コーポレート・M&A、ファイナンス、キャピタル・マーケッツ、知的財産、労働、紛争解決、事業再生等、企業活動に関連するあらゆる分野に関して、豊富な実績を有する数多くの専門家を擁している。国内では東京、大阪、名古屋に拠点を有し、海外では北京、上海、香港、シンガポール、ホーチミン、バンコク、ジャカルタ等のアジア諸国に拠点を有する。
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