SH4630 東証、第2回四半期開示の見直しに関する実務検討会を開催 福田直邦/德永大誠(2023/09/21)

ディスクロージャー

東証、第2回四半期開示の見直しに関する実務検討会を開催

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 福 田 直 邦

弁護士 德 永 大 誠

 

1 はじめに

 上場企業の四半期開示については、金融商品取引法(以下「金商法」という。)に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信の2つの制度が併存している。2022年6月および同年12月に、金融庁の金融審議会はディスクロージャーワーキング・グループ報告を公表し、第1・第3四半期については四半期報告書を廃止し、四半期決算短信に「一本化」する具体的方向性を示した。これを受け、金商法においてはすでに四半期報告書の廃止を盛り込んだ改正案が国会に提出されており、その成立を待っている状況にある。他方、四半期決算短信については、上記報告で示された具体的方向性に沿った実務の実現に向け、東京証券取引所(以下「東証」という。)が有識者により構成された「四半期開示の見直しに関する実務検討会」(以下「検討会」という。)を2023年6月に設置しており、現在も議論を継続している。検討会における検討テーマは大要①第1・第3四半期決算短信の開示内容、②第1・第3四半期決算短信の開示タイミング、③第1・第3四半期決算短信における監査人レビューの一部義務付け、④四半期決算短信における虚偽記載に対するエンフォースメント、⑤第2四半期・通期決算短信の取扱い、⑥決算短信のデータ配信形式、および⑦情報開示の充実であるが、本稿では紙幅の関係から、①から③までのテーマについて、現時点で明らかにされている検討状況を紹介する。

 

2 第1・第3四半期決算短信の開示内容

 検討会は、従来の第1・第3四半期報告書で開示されていた事項のうち、投資者の要望が特に強い以下の事項を第1・第3四半期決算短信の開示内容に追加して、開示を義務付けることを検討している。

 

サマリー情報 ►   「レビューの有無」を注記事項に記載(規則によるレビューと任意のレビューを区別)
►   「当四半期累計期間における連結範囲の重要な変更の有無」に変更
添付資料 財務諸表 日本基準、IFRS、米国基準で取扱いに差は設けず、以下の事項は一律義務付け
►   連結貸借対照表、連結損益計算書及び連結包括利益計算書
(CF計算書は投資判断に有用な情報として積極的な開示を要請)
注記事項 現行の注記事項に「セグメント情報等の注記」「キャッシュ・フローに関する注記」を追加
►   継続企業の前提に関する注記
►   株主資本の金額に著しい変動があった場合の注記
►   会計方針の変更・会計上の見積りの変更・修正再表示
►   四半期特有の会計処理
►   セグメント情報等の注記(新制度における半期報告書と同水準)
►   キャッシュ・フローに関する注記(CF計算書を省略する場合)
その他 ►   経営成績等の概況(決算説明資料など決算短信以外での開示を行うことも可能だが、その場合には該当書類を参照すべき旨・参照方法を記載)
►   継続企業の前提に関する重要事象等(現行と同じ)
►   レビュー報告書(レビューを受ける場合のみ添付)

出所:第2回事務局説明資料(株式会社東京証券取引所 上場部、2023年8月31日)8頁[1]より筆者作成

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(ふくだ・なおくに)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。1988年東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録(第一東京弁護士会)。

 

(とくなが・たいせい)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所アソシエイト。2019年東京大学法学部卒業。2021年東京大学法科大学院卒業。2022年弁護士登録(第二東京弁護士会)。

 

アンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業 https://www.amt-law.com/

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