SH4639 英国競争・市場庁(Competition & Markets Authority(CMA))、AI基盤モデル(Foundation Model)に関する初回報告書を公表 中崎尚(2023/09/28)

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英国競争・市場庁(Competition & Markets Authority(CMA))、AI基盤モデル(Foundation Model)に関する初回報告書を公表

アンダーソン・毛利・友常法律事務所*

弁護士 中 崎  尚

 

1 報告書公表までの経緯

 2023年9月22日、英国競争・市場庁(Competition & Markets Authority(以下「CMA」という。))は、AIの基盤モデル(Foundation Model)市場における競争と消費者保護の機能について、初期報告書(以下「本報告書」という。)を公表した。

 本報告書の公表は、2023年5月4日に開始されたCMAのAI基盤モデル市場の早期理解を促進することを目的とした初期レビュー[1]の次のステップを構成するものである。

 本報告書の主なポイントは以下のとおりである。

  1. ① 基盤モデルのある風景はまだ始まったばかりで、新興のものであるが、さまざまなレベルのアクセスを通じて利用できる幅広い基盤モデルがすでに存在している。
  2. ② さまざまな組織が基盤モデルに投資・開発しており、そのビジネスモデルもオープンなモデル、クローズドなモデルなど多様である。
  3. ③ 現段階では規制は必要ない。規制は競争とイノベーションを不必要に困難にする恐れがある。
  4. ④ その代わり、CMAは、基盤モデルの開発と展開が進展する中で、競争と消費者保護が引き続き効果的な推進力となるよう、Flexible guiding principlesを導入する予定である。
  5. ⑤ Flexible guiding principles がどのように受け止められ、採用されたかを含め、CMAの考え方のアップデートは2024年初めに発表される予定である。

 

2 基盤モデルとは

 基盤モデル(Foundation Model)の定義について、現在制定に向けて大詰めの段階を迎えているAI規則案(AI Act)においては「⼤規模なデータで学習され、出⼒の汎⽤性を考慮して設計され、幅広い特徴的なタスクに適応できるAIモデル」とするのに対し、本報告書では「膨大なデータに基づいて訓練された大規模な機械学習モデル」というシンプルな定義を採用している。

 その上で、本報告書は、最近の基盤モデルの発展と、ChatGPTやOffice 365 Copilotを始めとする各アプリケーションにおける採用の急速な拡大は、基盤モデルがイノベーションと経済成長に拍車をかける可能性を浮き彫りにしていること、基盤モデルはさまざまな産業を変革する可能性を秘めていることを指摘する。

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(なかざき・たかし)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャルカウンセル。東京大学法学部卒、2001年弁護士登録(54期)、2008年米国Columbia University School of Law (LL.M.)修了、2009年夏まで米国ワシントンD.C.のArnold & Porter法律事務所に勤務。復帰後は、インターネット・IT・システム関連を中心に、知的財産権法、クロスボーダー取引を幅広く取扱う。日本国際知的財産保護協会編集委員、経産省おもてなしプラットフォーム研究会委員、経産省AI社会実装アーキテクチャー検討会作業部会構成員、経産省IoTデータ流通促進研究会委員、経産省AI・データの利用に関する契約ガイドライン検討会委員、International Association of Privacy Professionals (IAPP) Co-Chairを歴任。2022年より内閣府メタバース官民連携会議委員。

 

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