最三小判 令和5年6月27日 懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件(長嶺安政裁判長)
【判示事項】
1 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分の適否に関する裁判所の審査
2 職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により公立学校教員を退職した者に対してされた一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分に係る県の教育委員会の判断が、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとはいえないとされた事例
【判決要旨】
1 裁判所が退職手当支給制限処分の適否を審査するに当たっては、退職手当管理機関と同一の立場に立って、処分をすべきであったかどうか又はどの程度支給しないこととすべきであったかについて判断し、その結果と実際にされた処分とを比較してその軽重を論ずべきではなく、退職手当支給制限処分が退職手当管理機関の裁量権の行使としてされたことを前提とした上で、当該処分に係る判断が社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に違法であると判断すべきである。
退職手当支給制限処分:職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分
2 酒気帯び運転を理由とする懲戒免職処分を受けて公立学校教員を退職した者が、職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号の規定により、県の教育委員会から、一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けた場合において、次の⑴~⑶など判示の事情の下では、上記処分に係る上記教育委員会の判断は、上記の者が管理職ではなく、上記懲戒免職処分を除き懲戒処分歴がないこと、約30年間にわたって誠実に勤務してきており、反省の情を示していること等を勘案しても、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとはいえない。
⑴ 上記酒気帯び運転の態様は、自家用車で酒席に赴き、長時間にわたって相当量の飲酒をした直後に、同自家用車を運転して帰宅しようとしたところ、運転開始から間もなく、過失により走行中の車両と衝突し、同車両に物的損害を生じさせる事故を起こすというものであった。
⑵ 上記の者が教諭として勤務していた高等学校は、上記酒気帯び運転の後、生徒やその保護者への説明のため、集会を開くなどの対応を余儀なくされた。
⑶ 上記教育委員会は、上記酒気帯び運転の前年、教職員による飲酒運転が相次いでいたことを受けて、複数回にわたり服務規律の確保を求める通知等を発出するなどし、飲酒運転に対する懲戒処分につきより厳格に対応するなどといった注意喚起をしていた。
(2につき、反対意見がある。)
【参照法条】
職員の退職手当に関する条例(昭和28年宮城県条例第70号。令和元年宮城県条例第51号による改正前のもの)12条1項1号
【事件番号等】
令和4年(行ヒ)第274号 最高裁判所令和5年6月27日第三小法廷判決
懲戒免職処分取消、退職手当支給制限処分取消請求事件
破棄自判
原 審:令和4年(行コ)第1号 仙台高裁令和4年5月26日判決
原々審:令和元年(行ウ)第26号 仙台地裁令和3年12月2日判決
【判決文】
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=92170
この記事はプレミアム向け有料記事です
続きはログインしてご覧ください